投資の基本!知っておきたい主要リスクとヘッジ方法【市場・信用・地政学リスク編】

投資の世界には、様々なリスクが存在します。これらのリスクを理解し、適切な対策を取ることで、安定した投資を進めることができます。そこで、主要な投資リスクとその対策について、2回にわたって詳しく解説します。前半は、「市場リスク」「信用リスク」「地政学リスク」についてです。


【1】 「市場リスク」(値動きのリスク)とは?

「市場リスク」(値動きのリスク)とは、株価の変動、金利の変動、通貨の価値の変動などにより、投資家が損失を被るリスクです。「市場リスク」の要因は、経済状況の変化、政治的な問題、自然災害など、多岐にわたります。多くの場合投資家は、利益を追求する一方で、これらのリスクをどれだけ許容するかで投資戦略が大きく変わります。

リーマン・ショックから記憶に新しいコロナショックまで

実際に、数年に一度くらいの頻度で大きな下落が起きています。例えばリーマン・ショックの事例です。2008年に発生したリーマン・ショックは、金融危機を引き起こし、世界中の株価が大きく下落しました。

2008年9月にリーマン・ブラザーズが破綻した際、アメリカのダウ平均株価は短期間で約40%も下落しました。この急激な値動きは、個別銘柄だけでなく、多くの投資ファンドや国の経済にも深刻な影響を与え、多くの投資家がばく大な損失を被りました。

また2020年の新型コロナウイルス(コロナショック)も、世界経済に甚大な影響を及ぼしました。米国株の主要な指数であるS&P500をはじめ日経平均も大きく下落。日経平均は、2020年1月17日からの2カ月で約3割暴落しました。行動制限により経済活動が止まったこと、渡航できなくなったことで特に航空業界や観光業界は大きな打撃を受けました。その影響は長期にわたりましたが、徐々に回復しています。

ほかにも、ITバブル崩壊、東日本大震災でも株価は急落しています。

「市場リスク」をヘッジするには?

これらの事例から学べることは、「市場リスク」が投資において非常に重要であり、どれだけのリスクを許容するか、リスクをどうやってヘッジ(回避)するかが重要であるということです。

リーマン・ショックやコロナショックのような大きな市場の動きは予測することが難しく、その影響を受けないポートフォリオを作ることは非常に難しいため、こうしたリスクにどう対処するかは各投資家がしっかりと考える必要があります。

例えば、さまざまな資産クラスや地域に投資することで、リスクを分散させたり、株価指数の先物やオプションを用いて、市場が下落した場合のリスクをカバーすることなどがヘッジとして考えられます。

そして全体の経済状況や政策、国際情勢に注目し、それらが市場に与える影響を理解することが重要です。

【2】「信用リスク」とは?

債券やローンなど、借入れを行った企業や国が、期限までに利息や元本を返済できなくなるリスクのことを「信用リスク」といいます。このリスクは、投資家が投資先の国や企業の信用力を評価する際に重要なポイントとなります。

具体的な事例としては、2009年に起こったギリシャ財政危機が挙げられます。2009年、ギリシャで政権交代をきっかけに財務赤字が明らかとなり、国債が暴落したことなどから事実上の債務不履行状態に陥ったことを記憶されている方も多いでしょう。債務不履行(デフォルト)とは、借りたお金を返せないことを指します。

また、アルゼンチンは過去に複数回のデフォルトを経験していますが、2020年に6年ぶり9度目のデフォルトに陥りました。今年はアメリカがデフォルトに陥るのではないかとの懸念が台頭する場面もあったり、日本の債務も、対GDP比でなんと約250%となっており、他人事ではありません。

「信用リスク」への対策は?

対策としては投資をする前に国や企業の財務状況や信用評価をしっかりと調査し、安定した経営をしている企業を選択することが必要になります。また、株式やFXなどのトレード(数分から数時間など値動きを目の前で把握している状況)のような取引や、定期的に値動きをウォッチして銘柄を入れ替えるなどメンテナンスを心がけることで何かが起きた時にすぐに対処できるようにすることは大切です。債券投資の場合は、期間が短い債券を選ぶことで、将来の不確実性を減少させます。

リスクの低い投資(国債など)と高リスクな投資をバランスよく組み合わせる、クレジットデフォルトスワップ(CDS)などを利用してヘッジを行うなども対策として有効でしょう。

【3】「地政学リスク」とは?

「地政学リスク」とは、国際関係の変動や地域的な紛争、政府の政策変更、天災などの要因が投資のリターンに影響を与えるリスクを指します。

最近ではウクライナ有事もあり、戦争という地政学リスクが注目されているように思います。戦争に関する相場格言として、「遠くの戦争は買い」や、ナポレオンが敗れたワーテルローの戦い(1815)での値動きを利益に変えたネイサン・ロスチャイルドが言ったとされる「銃声が鳴ったら買え」などが有名ですが、戦争が始まると緊張感や投資家心理の冷え込みなどから株価が下がる傾向にあります。そして戦闘が実際に開始されると買い戻されやすいと言われています。

10月7日(土)から中東地域での戦闘の激化が報じられています。中東の戦闘激化による供給減少懸念から原油価格が上昇。一方で「地政学リスク」から利上げが控えられるのではとの観測などから金融引き締めの長期化懸念が後退するなど、相場の動きにつながっています。

「地政学リスク」に関しては投資先国や地域の政治動向、国際関係の緊張度、内政の安定性を評価することが重要です。投資先を複数の国や地域に分散させることで、地政学リスクを軽減することや、定期的に国際ニュースや専門報告をチェックして、地政学リスクの動向を把握していきましょう。

次回も引き続き投資のリスクを紹介

さて今回は市場リスク、信用リスク、地政学リスクについてお伝えしました。いかがでしたでしょうか。

あなたが投資しようと思っている商品にどのようなリスクが考えられるのかを把握し、あらかじめ資金管理や、思惑と外れた値動きをしてしまった際の対処を考えておくなど備えておくことが、投資をする上では大切だと考えます。

そして、投資をする上で考えられるリスクは実はこれだけではありません。来週はさらに考えうるリスクについてお伝えいたしますのでお楽しみに。少しでも皆様の投資の参考にしていただければ幸いです。

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