過去最悪の「クレカ不正利用被害額」9割以上を占める “要注意”手口 被害回避のための「必須事項」とは?

常に狙われている意識を持つ。それがクレジットカードの不正利用を防ぐうえで肝要だ(C-geo / PIXTA)

クレジットカード(クレカ)の不正利用による被害額が増大の一途となっている。日本クレジット協会がさきごろ発表したデータによると、2022年のクレカ不正利用による被害額は436億7000万円で過去最悪を更新。2023年も6月までですでに262億4000万円となっており、さらに前年を更新する勢いだ。

背景には、キャッシュレス決済の浸透がある。国は2025年までにキャッシュレス決済比率を40%程度にする目標を掲げ、その推進に取り組んでおり、2022年時点では36%に達したことを報告している。

急増に比例してクレカ不正利用被害額も増大

10年で2.4倍のペースで急速に進んだキャッシュレス化。その中心となったのは、クレジットカードだ。デビットカード、電子マネーなど他の決済手段の平均が2%に満たない中、30.4%を占め、キャッシュレス化を牽引する。

この動きに比例し、クレカの不正利用による被害額にも歯止めがかからない状況だ。なかでも、クレカの「番号盗用」による被害が激増しており、ここ2年は全体の被害額の94%を超える構成比で、クレカ不正利用の元凶となっている。

クレジットカードの普及がまだそれほどでなかった頃は、カードの偽造や盗難、紛失が被害の多くを占めており、番号盗用による被害は統計の項目にさえなかった。状況を一変させたのはネットショッピングの浸透だ。

ネットでの購買は当然、キャッシュレスが基本となる。そこで、それまではクレカの使用に慎重だった層も大量にシフトし、ネットでのショッピングに興じるようになった。リアルでない分、警戒心も緩み、そこをネット窃盗団らに狙われた。

クレカ不正利用の2大パターン

警視庁はその手口について次のように明かす。

「最近発生しているクレカ不正の利用手口は大きくは次の2パターン。ネット上での不正利用、そしてお店での不正利用です。情報が盗まれる手口は、偽サイトで情報を登録させるフィッシング、クレカを撮影、そして盗難・遺失です」。

被害にあったらやるべきアクション

その上で「クレカでの不正利用を防ぐには、クレカを他人に見せない、それとクレカの情報をインターネット上の信用できるサイト以外で入力しないこと」と警戒を呼びかける。

さらに被害を受けてしまった場合についてもアドバイスする。

「すぐにクレカ会社へ連絡し、最寄りの警察署へ相談ください。そしてクレカを再発行してもらってください」(同前)。

こうすることで不正利用を最小限に抑え、被害届を出すことで、カード会社からの被害補償もスムーズにしてもらえる。

オンラインゲーム上での支払いトラブルの余波

昨今はオンラインゲームによる支払いトラブルも増えているという。子どもがオンラインゲームに興じ、ゲーム内での支払いで高額請求を受ける事例だ。 日本クレジット協会にもそうした相談がよせられるという。民法では、未成年が親の承諾を得ずに行った契約は取り消し可能とされるが、クレジット決済の場合、親に責任が問われる。

というのも、クレカはあくまでもクレカ会社がカード名義人にカードを「貸与」しているという建て付け。そのため、子どもがたとえ子どもが支払ったとしても、親の管理不十分として「善管注意義務」が問われる。結果、カード名義人である親に、全額返済やカード強制退会などの罰則が適用されることになる。

「怪しきは近づかず」が最大の予防策

同協会は、こうした予期しずらい被害を防ぐ方法として、「①ネット利用にルールを設ける、②ネット利用後はログアウトを忘れない、③クレカを適切に管理する」の3つを提言している。

紛失や盗難と違い、物理的に実感しづらく、どうしてもわきが甘くなりがちなネットを介してのクレカ番号の扱い。「自分は大丈夫」という過信は捨て、少しでも怪しいと感じたり、違和感を覚えることがあれば、まず疑って、安易にアクションを起こさないようにすることがなによりの予防策と心得ることが肝要だ。

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