江戸時代の絵に癒やされる…天才絵師・長沢芦雪の作品が大阪で

かわいい仔犬をはじめとする生き生きとした動物の描写、卓越した描写力と思わずアッと驚く大胆不敵な構図の数々。江戸時代中期に京都で活躍した天才絵師・長沢芦雪(ながさわろせつ)の作品が楽しめる特別展が、「大阪中之島美術館」(大阪市北区)で開催中だ。

長沢芦雪≪岩上猿・唐子図屏風≫ 個人蔵 10月7日~11月5日展示 可愛らしい仔犬と子ども。芦雪は、幼い頃に母と別れたため、子どもや小動物に慈愛の眼差しを向けたという

■ 思わずキュン! かわいい動物絵の数々

芦雪は、伊藤若冲(じゃくちゅう)、曽我蕭白(しょうはく)らとともに「奇想の画家」として注目を集める天才絵師。写生画の祖・円山応挙(おうきょ)の高弟で、その写生力を受け継ぎながらもトリミングしたような奇抜な構図やユーモア溢れるサービス精神で独自の世界を展開し、人気を博した。

今回は、芦雪が亡くなった終焉の地・大阪で初の大回顧展となる。初公開作品が11点と開幕前から注目を集めており、芦雪の専門家である美術史家で「東京大学」の河野元昭名誉教授や、京都の「福田美術館」の岡田秀之学芸課長が監修者として参加している。

型破りな画家として知られる芦雪だが、近年、かわいい動物を描く画家として「芦雪犬」と呼ばれる仔犬の絵が代名詞に。開幕前にSNSで話題にあがったのが、思わずキュンとするような仔犬が描かれた『梅花双狗図』『降雪狗児図』(どちらも後期展示11月7日~)だ。前期でも『岩上猿・唐子図屏風』で愛らしい子どもと仔犬が描かれている。

前期の注目作品は、『蹲る虎図』(うずくまるとら)と3センチ四方に500人の羅漢が描かれた超ミクロの細密画『方寸五百羅漢図』だ。監修者の岡田さんは「うずくまる虎という作品名ですが、猫です」とキッパリ。虎は当時の日本には居ないため、大きな猫を一種のユーモアとして描いたという。

長沢芦雪 ≪方寸五百羅漢図≫ 個人蔵 前期展示 中央の3センチ四方のなかに、なんと500人もの羅漢が描かれている。超ミクロな世界が広がる注目作品

芦雪の代表作として知られているダイナミックな迫力の無量寺(和歌山県)の重要文化財『虎図襖』『龍図襖』(前期展示)も見逃せない。個人蔵の秘蔵作品が多く、前期と後期で大幅な展示替えがおこなわれる点が同展の大きな特徴であり、見逃すと次はいつ観られるか分からない作品も多いので必見だ。

『生誕270年 長沢芦雪―奇想の旅、天才絵師の全貌―』は「大阪中之島美術館」にて、12月3日までの開催(前期:10月7日~11月5日、後期:11月7日~12月3日)。時間は午前10時~午後5時(最終入館受付は閉館30分前まで)、料金は一般1800円ほか。

取材・文・写真/いずみゆか

特別展「生誕270年 長沢芦雪―奇想の旅、天才絵師の全貌―」

期間:2023年10月7日(土)~12月3日(日)
前期:10月7日(土)~11月5日(日)
後期:11月7日(火)~12月3日(日) ※この日程以外にも展示替えあり
時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)※月曜休
料金:一般1800円、高大生1100円、小中生500円

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