HATA ISM「ラーメン」〜 福山になくて福山に受け入れられるものを。ラーメンのイメージを変えて福山駅前を盛り上げる!

福山市でラーメンといったら、どんなラーメンを想像しますか?

尾道ラーメンのような醤油味でしょうか?
それとも豚骨ラーメンでしょうか?

福山駅前にはそれらとはまったく違った、新しいラーメンが食べられる店があります。

それが、2023年(令和5年)にオープンした『HATA ISM「ラーメン」ハタイズム ラーメン)』です。

店主はイタリアなどの欧州や、東京など国内の星付きレストランなどで、シェフとして腕をふるっていました。

すごい経歴、そしてラーメン店としてはめずらしい経歴をもった店主がつくるラーメンは、スタイリッシュで洗練された印象。

ほかでは味わえないような奥深い味を楽しめるのです。

HATA ISM「ラーメン」が生まれるまでのいきさつや、店主のラーメンに込めた思いやこだわりなどについて、深掘りしましょう。

HATA ISM「ラーメン」とは

HATA ISM「ラーメン」は、福山市中心部・三之丸町にあるラーメン店です。

JR福山駅南口ロータリーの西側の一角にあります。

HATA ISM「ラーメン」は、2023年(令和5年)1月にオープンしました。

店主はなんと、東京や欧州などのレストランでシェフとして活躍していた経歴の持ち主。

二つ星・三つ星の名店でも活躍していました。

そんな凄腕のシェフが手がける、めずらしいラーメン店なのです。

HATA ISM「ラーメン」の外観・店内はラーメン店とは思えないほど、スタイリッシュで洗練された雰囲気

店内には、カウンター席とテーブル席があります。

カウンターは9席
テーブル席は4人がけ2卓と、6人がけが1卓

HATA ISM「ラーメン」のメニューを紹介

2023年(令和5年)9月時点の情報。価格は消費税込

HATA ISM「ラーメン」は、事前に食券を購入する仕組みです。

券売機は、入口をくぐってすぐ左手にあります。

メインとなるラーメンは、「鶏魚介ラーメン(あっさり醤油仕立て)」と「辛いラーメン」、さらに期間限定の「季節のラーメン」の三本柱です。

取材時(2023年9月)の季節のラーメンは、「肉虎つけメン」でした。

鶏魚介ラーメンや辛いラーメンは、いくつかのバリエーションがあります。

  • 基本(焼き豚 1枚)
  • 味玉入り(焼き豚 1枚、味玉 1個)
  • 海老入りワンタン(焼き豚 1枚、海老入りワンタン 3個)
  • 焼き豚増し(焼き豚 4枚)
  • スペシャル 全部のせ(焼き豚 4枚、海老入りワンタン 3個、味玉 1個)

お好みの種類を選んでください。

また、おかわりやトッピングメニューもあります。

替え玉替えごはんなどのほか、麺と具材が替え玉できる「替え玉アッパー」も。

なお、おかわりは卓上にて現金払いです。

さらにHATA ISM「ラーメン」では、サイドメニューも充実しています。

なかでも人気なのは「若鶏のカラアゲ定食」。

日替わりで登場する「本日のごはんもの」もおすすめです。
取材時は、「肉味噌ごはん」でした。

このほか「熟成焼き豚ごはん」や「卵かけごはん」などがあります。

なお夜営業のときには、夜専用メニューが登場。

アルコールドリンクは、500円均一なのがうれしいですね。

仕事帰りにチョイ飲みなども楽しめます。

卓上には一味トウガラシ、ペッパー、粉サンショウが置いてある

イチオシ・人気のメニュー

たくさんあるHATA ISM「ラーメン」のメニューのなかから、お店のイチオシやお客から人気のあるものを紹介します。

鶏魚介ラーメン(あっさり醤油仕立て) スペシャル

鶏魚介ラーメン(あっさり醤油仕立て)」は、HATA ISM「ラーメン」で人気のメニューです。

バリエーションがいろいろあります。

なかでも一番人気は「海老入りワンタン」(1,080円)ですが、取材時はもっとも豪華な全部のせの「スペシャル」(1,440円)を注文しました。

ラーメンと具材が、別々に盛りつけられているのがスペシャルの特徴です。

スペシャルの具材は、焼き豚が4枚海老入りワンタンが3個味玉1個薬味
ワンタンのみ、はじめからラーメンにトッピングされています。

薬味は生の赤タマネギと、素揚げのジャガイモです。
赤タマネギは状況によって、ダイコンやミズナなどに代わることがあります。

ラーメンは、非常に洗練された印象の美しいビジュアルです。

中央には三つ葉とトリュフペースト、スペシャルの具材の一種である海老入りワンタン3個が浮いています。

スープは透明感のある、琥珀色。

飲むと甘味と塩味とともに、奥深いダシの風味が口の中いっぱいに広がり、とても心地よい味わいです。

麺は、平打ちで中細のストレート。

モチモチとした食感で、スープと絡んでおいしいです。

海老入りワンタンは、自家製です。

トロッとしてとろけるような柔らかな皮の中に、ジューシーでほんのりと海老の風味が広がるアン。

スープをよく吸っていて、おいしいです。

さらに焼き豚は、薄紅色の美しい見た目。

ひとつのサイズが大きく、食べごたえがあります。

食べると味付けは薄めで肉の味わいがシッカリと楽しめると同時に、炙られた香ばしい風味が口いっぱいに広がって最高のおいしさ。

焼き豚だけでも、非常に満足できる逸品だと思います。

スペシャルだと、その焼き豚が4枚も食べられるのですからうれしいですね!

辛いラーメン スペシャル

辛いラーメン」は、名前のとおり辛い味わいを楽しめます。

辛さは並辛・中辛・大辛から選択可能。

辛いラーメンは、女性から人気があるメニューです。

鶏魚貝ラーメンと同じく、バリエーションがあります。

そのなかから、全部のせの「スペシャル」(1,480円)の並辛を選びました。

鶏魚貝ラーメンのスペシャルと同じく、ラーメンと具材が別皿です。

具材の種類も同様で、焼き豚が4枚海老入りワンタンが3個味玉1個薬味

海老入りワンタンのみ、最初からラーメンにトッピングされています。

また辛いラーメンの中央には辛味噌がドーム状に盛られ、上から糸トウガラシ

さらにスープには、太モヤシ刻みニラが入り、そして赤いラー油がかかっています。

スープを飲むと、甘辛く奥深いスープの味わいに、ラー油のピリッとした辛さが混じります。

さらに辛味噌を少しずつ溶かしていくと、スープの味わいに変化が出てきました。

辛味噌の甘味と塩味に、ピリリとした辛味が混じりあい、複雑なおいしさになります。

自分の好みで辛味を溶かし、調整できるのがいいですね。

熟成焼き豚ごはん”極み”

ごはんもののなかから店主の畠さんがおすすめするのが、「熟成焼き豚ごはん”極み”」(640円)です。

熟成焼き豚ごはん」(440円)の豪華版にあたります。

運ばれてくると、丼のフタから思いっきり大サイズの焼き豚がはみ出しており、インパクト抜群!

フタを開けると、丼からはみ出し、完全に丼の一面を覆い尽くしたたくさんの焼き豚。

1枚のサイズも大きめです。

中央にはネギ、ワサビソース、トリュフソースが載っています。

焼き豚をはぐって、下側をのぞいてみました。

すると、下側にも焼き豚が!

厚めの焼き豚をサイコロ状にカットし、刻み海苔とともにごはんの上に敷き詰められています。

ごはんが見えないほど、たくさんの焼き豚です。

そしてタレとマヨネーズがかかっています。

見るからにおいしそう。

まず焼き豚を食べると、肉の味わいと香ばしい風味が広がります。

そこにワサビやトリュフの風味がほんのりと香り、アクセントに。

下側のごはんやサイコロ状の焼き豚などを食べると、適度な甘辛さのタレの味わい、ムチムチとした焼き豚の食感と味、海苔の風味、マヨネーズのまろやかな味わいなどが絡み合い、ドンドンと食べ進めてしまうおいしさです。

こだわりの洗練されたラーメンが楽しめるHATA ISM「ラーメン」。

オーナーでシェフの畠浩章(はた ひろあき)さんへインタビューをしました。

HATA ISM「ラーメン」のオーナー・シェフの畠 浩章さんへインタビュー

畠 浩章さん

こだわりの洗練されたラーメンが楽しめるHATA ISMハタイズム「ラーメン」

オーナーでシェフの畠浩章(はた ひろあき)さんに開業の経緯や店のこだわり、今後の展望などの話を聞きました。

レストランのシェフだったがコロナ禍が転機に

替え玉

──もともとシェフをしていたと聞いた。

畠(敬称略)──

私は福山で生まれ育ちましたが、学校卒業後に福山を離れて料理の世界に入り、イタリアなどの欧州や東京など国内のガストロノミーのレストランでシェフとして働いてきました

ガストロノミーというのは、地域の風土・歴史・文化を料理で表現することです。

なかには、二つ星や三つ星の店もありました。

海外ではトータルで6〜7年、国内ではトータル10年くらい働いたでしょうか。

転機となったのは、新型コロナウイルス感染症の流行でした。

そのころ東京のレストランでシェフをしていたのですが、コロナ禍の影響で営業が不振となったのです。

もともと東京の生活について「家賃が高くて人が多く、自然も少なくて暮らしにくく疲れるな」と感じていました。

しかし仕事や生活が忙しくて、そんな気持ちを深く考えることがなかったのです。

コロナ禍になって暇な時間が増えると、東京の生活の嫌な部分についてあらためて考えるようになりました。

これは私だけでなく、まわりの同世代の料理人も同じ境遇だったんです。

そんなときに声がかかって、生活困窮者向けの炊き出しに参加することになりました。

そこでいっしょに参加した料理人が「俺たちはふだん高級な料理を富裕層向けにつくっているけど、この人たちが俺たちの店に来て俺たちがつくった料理を食べることはあるんだろうか」と話したんです。

この話を聞いて私は「もともと俺は、人を選ぶような料理をつくりたかったわけじゃなかったよな」と思うようになりました。

ただ食材にこだわり、調理法などにこだわると、必然的に料理の価格は高くなってお客様も経済的に余裕がある人になるのは自然の流れではあります。

しかし、どこか違うなと思うようになりました。

やがてまわりの料理人のなかに、地元に帰ったり地方へ移住したりして店を開く人が出てきました。

そこで私も地元・福山に帰って店をしようと思ったんです。

替え玉アッパー

──ラーメン店を開業することになった経緯を知りたい。

畠──

東京と福山では環境が違うので、同じような感覚で店はできません。

とはいえ、食材や調理法に妥協をしたくありませんでした。

そこで思い至ったのが、ラーメンだったんです。

ラーメンは、世界に通用する日本の料理。
さまざまなジャンルがあって、自分のアイデアを生かせる余地があると思いました。

さらに大衆的な料理なので、人を選ばず多くのかたに食べていただけます

妥協せずに、あまり高くならない価格で提供できそうでした。

こうして2022年(令和4年)11月にHATA ISM「ラーメン」としてプレオープンし、翌年1月に正式オープンに至りました。

──ラーメン店を開業するにあたり、修業をしたのか?

畠──

いいえ。ラーメンの修業はしていません。

というのも、ラーメンのダシ取りなどスープづくりは、私のいままでの料理経験・知識が生かせるから。

ブイヨンづくりなどは、ダシ取りに応用できます。

あとは独学でいけました。

大変だったのは、ラーメンとして提供できる価格にすること

ラーメンとしてお客様が出せる金額にするため、使う食材や調理法を工夫する必要があり、そこがかなり苦戦しましたね。

しかも、電気料金や食材価格の高騰もありました。

これは開業後、現在(2023年9月取材時点)までたびたび原料価格の高騰があり、ずっと試行錯誤していることです。

開業時に提供していたメニューは現在とは違うものでしたが、価格維持が難しく、一新して現在のものになりました。

お客様の負担にならない状態で、よりおいしくこだわったものが出せるよう、原料価格と格闘しながらいろいろ研究しています。

地元を感じる食材を使用

スープ茶漬け替えごはん

──HATA ISM「ラーメン」の特徴やこだわりは?

畠──

ひとつは、ラーメンに「瀬戸内」や「中国地方」を感じる食材を使っていることですね。

大量に使っている煮干しは瀬戸内海で獲れたものですし、地鶏は四国産。

アサリも瀬戸内海産が中心で、シジミは島根県の宍道湖産です。

さらに瀬戸内の海塩や、鞆の浦の本みりんなども使っています。

これは意図的に選んだわけでなく、「これがいいな」と選んでいった結果、たまたま瀬戸内・中国地方のものがそろいました。

福山で育ったので、DNAにでも組み込まれているのでしょうか(笑)。

ふたつめのこだわりは、化学調味料を使っていないこと。

ですので、天然の調味料を使っています。

福山になくて、かつ福山に受け入れられるものを

──店を運営するうえで大事にしていることは?

畠──

福山になくて、かつ福山に受け入れられるものを提供する」というコンセプトのもとで、営業しています。

福山のラーメンといえば、尾道系の醤油ラーメンが多いですよね。
次いで、豚骨系のラーメン。

それ以外のタイプのラーメンは、少ないと感じています。

手探りしながらですが、地元のかたがアッと驚きながら、おいしいと思ってもらえるラーメンを提供していきたいです。

あと私は、福山駅に比較的近いところで生まれ育ちました。

ですから福山駅前や中心市街地には、かなり愛着があります。

福山駅前・中心市街地を、いっそう盛り上げていきたいという気持ちは強いですね。

今後の展望

かつて提供されていた拍麗ラーメン(写真提供:HATA ISM「ラーメン」)

──今後の展望ややってみたいことがあれば、教えてほしい。

畠──

さきほど開業時のメニューを一新した話をしましたが、そのとき鶏白湯(とりパイタン)のラーメン「拍麗ラーメン」がありました。

最近になり、お客様から拍麗ラーメンの復帰を求める声がかなりあるんです。

これは想定外でした。

ですから直近の課題は、拍麗ラーメンの復活ですね。

なんとかふたたび出せる金額になるよう、食材などを調整して研究中です。

あとは、店の知名度をもっと高めたいですね。

もっと地元での知名度を高め、もっと大勢の地元のお客様に来ていただき、福山駅前を盛り上げたいですね。

おかげさまで、近隣のラーメン激戦区・岡山から噂を聞きつけて来店されるかたも多く、「とてもおいしい」「近くにあったら毎週食べたい」という感想をいただいております。

少しずつですが、当店のことが知ってもらえているなと感じています。

もうひとつの目標として、福山でのラーメンのイメージを変えたいです。

いい食材を使って、東京など都会と遜色ないレベルのラーメンをつくってみたいですね。

HATA ISM「ラーメン」

数々のレストランでシェフをしてきた経験を生かし、福山ではあまりない洗練されたラーメンを提供するHATA ISM「ラーメン」。

ぜひ福山駅前を訪れて、店主のこだわりが詰まったラーメンを味わってみてください。

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