iDeCoとNISA、どんな割合で投資するのが理想?

節税効果の高い「iDeCo」と柔軟性のある「NISA」で、どのような割合で投資をするべきかと悩む読者は多いことでしょう。2024年からNISAは改正されるので、NISA優勢の声もよく聞きます。

今回は、「iDeCoとNISAの理想的な投資割合」について、目安となる考え方をまとめていきたいと思います。


iDeCoとNISAの制度を簡単におさらい

通常、投資から得られる運用益に対して、20.315%の税金がかかります。iDeCoもNISAも、運用益にかかる税金をゼロにできるので、効率よくお金を増やしていくには欠かせない制度と言えます。

iDeCoはこれに加えて、掛け金の全額が所得控除になるため、所得税・住民税の負担を少なくすることができます。よって、税制優遇面ではiDeCoに軍配が上がります。その代わり、iDeCoは60歳以降まで引き出せないという「資金ロック」があり、NISAはそのような制限はないため、さまざまな用途で資金を引き出せます。

なお、iDeCoとNISAは併用ができます。NISAは2024年から新NISAとして生まれ変わります。iDeCoと新NISAの制度を比較した表は次のとおりです。

(株)Money&You作成

図の太字が有利だと思われる点です。

投資できる商品において、どちらも太字にしているのには理由があります。投資できる商品の種類や数でいえば新NISAに軍配が上がりますが、中には元本確保型の定期預金や保険がいいという方もいることでしょう。そうした方はiDeCoのほうがいいということになります。とはいえ、iDeCoは運用益にかかる税金をゼロにできる制度なので、投資信託を選び、コツコツと増やしていく方が税制優遇の恩恵をより受けられます。

ところで、iDeCoも新NISAも万能ではありません。「長期・積立・分散投資」ができる制度とはいえ、元本割れする可能性をゼロにはできません。元本割れする可能性を低くするには、15年以上の期間が必要というデータもあります。また、iDeCoで元本確保型の定期預金や保険を選んでも、口座管理手数料が毎年かかるので、その分資産が減っていきます。

iDeCoは60歳以降にならないと引き出しができない、NISAは15年以上の期間が必要ということで、1年、3年、5年、10年といった期間で用意しないといけない資金の準備には向いていないことを意味します。

お金は目的別に分けて、適した金融商品・制度で貯める

iDeCoやNISAは万能ではないという話をしましたが、「お金は目的別に分けて、適した金融商品・制度で貯める」ことが重要です。

具体的には、お金を「日々出入りするお金」「5年、10年以内に使い道が決まっているお金」「10年超の将来のためのお金」に分け、それぞれ別の口座や金融商品、方法で貯めていきます。

「日々出入りするお金」とは、日常生活費はもちろん、もしもの場合に備えるお金です。生活費の6ヶ月~1年分は少なくとも確保しておきたいところです。急な病気やケガで働けなくなったり、リストラ・転職・介護離職などが起こったりしても慌てずに済みます。「増やす」というよりも、すぐに引き出せるかどうかが鍵になってくるので、出し入れしやすい普通預金口座で貯めておくとよいでしょう。

結婚資金、マイホームの頭金、留学費用、車の購入費用など、5年、10年以内に使うことがほぼ決まっているお金は、すぐに引き出すニーズはないため普通預金よりも増やしたいところですが、いざ使うときに元本割れしていると大変です。元本割れしにくく、少しでお金を増やせる金融商品が適していますので、定期預金や個人向け国債などが候補になります。
個人向け国債は「変動10年国債」がおすすめです。今後、金利上昇してくフェーズになった際、もらえる利息も増えていきます。

子供の大学費用や老後資金など10年以上使わない将来のためのお金は、使うまでに時間の余裕があるので、iDeCoやNISAを活用して資産形成をしていくと良いでしょう。

iDeCoとNISA、年収別の投資割合の目安は?

いよいよ本題です。ここまで読んでお分かりいただいている通り、毎月貯蓄できる金額全てをiDeCoとNISAに割り振っていくという話は現実的ではありません。

「日々出入りするお金」「5年、10年以内に使い道が決まっているお金」「10年超の将来のためのお金」に分ける必要があります。そして「10年超の将来のためのお金」を準備するために、iDeCoとNISAを活用することになります。

まずは年収で考えるよりも、年齢でどちらを優先するかが決まってくるでしょう。20歳代、30歳代、40歳代であれば、iDeCoを優先するよりも、引き出し制限のないNISAを利用しておく方が、さまざまな資金用途に活用できます。

50歳代であれば、将来のお金といえば「老後資金」になりますし、年収が生涯で一番高い時期であることが予想されるため、所得控除の効果が得られるiDeCoを優先するメリットが大きくなります。もちろん、毎月貯蓄できる金額が多いならば、iDeCoとNISAを併用した方が良いです。

その上で、年収別で考えてみます。前提条件は以下の通りです。

・東京都在住、独身、所得控除が基礎控除と社会保険料控除のみ。社会保険料は年収の15%と仮定

・企業年金のない会社員とする。iDeCoの毎月の掛け金上限額は2万3000円

・生活費の6ヶ月~1年分の預貯金はあるものとする

同条件によれば、

・年収400万円~441万5384円は、所得税率5%

・年収441万5385円~649万2307円は、所得税率10%

・年収649万2308円~800万円は、所得税率20%なお、住民税率は、所得税率に関係なく一律10%です。所得税率が高いほど、iDeCoの節税効果も高くなります。

年間27万6000円(月2万3000円)をiDeCoで積み立てる場合、
年収400万円~441万5384円は、年間で4万1400円が節税できます。
年収441万5385円~649万2307円は、年間で5万5200円が節税できます。
年収649万2308円~800万円は、年間で8万2800円が節税できます。

毎月、「10年超の将来のためのお金」に積み立てられる金額が5万円以上ある場合は、iDeCoを掛け金上限額いっぱい積み立て、残りをNISAという形に落ち着くかなと思います。今回の条件の場合は、2万3000円がiDeCo、2万7000円がNISAとなり、比率は46%、54%と半半です。

毎月3万円という水準の場合、所得税率20%以上であれば、節税効果の高いiDeCoを上限いっぱいで残りをNISAが良いでしょう。

所得税率が10%以下の場合は悩ましいところです。iDeCoを上限いっぱいで残りをNISAでも良いですし、月1万円はiDeCoで2万円をNISA、月1万5000円ずつ投資という形も良いとは思います。NISAだけを活用するという手もありますが、リスクを冒さずに手に入る節税金額を手放すのは勿体無いかなと思います。

会社員や公務員の場合、iDeCoの掛け金上限は1万2000円~2万3000円なので、iDeCoをフルに活用しても、NISAにも投資できる余力はあることでしょう。毎月の貯蓄金額に余力があるならば、併用する道を探っていくのが良いと考えます。iDeCoの節税で浮いた金額をNISAでの投資に回していけば、お金が増えるスピードは加速していくことでしょう。

改めて、iDeCoとNISAは万能ではありません。ここまで説明してきた通り、「目的別に分けて、適した金融商品・制度で貯める」観点と年齢の観点を優先し、次点で年収の観点を取り入れて、投資割合をご判断いただければと思います。

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