青森県立美術館で奈良美智さん個展開幕 創作の下地語る

講演で、北に向かった旅の思い出などを語る奈良さん=14日午後、青森市の県立美術館
オープニング・トークで、自身の創作の背景などを語る奈良さん=14日午後、青森市の県立美術館

 青森県弘前市出身の現代美術家・奈良美智さん(63)の個展「奈良美智: The Beginning Place(ザ ビギニング プレイス) ここから」(東奥日報社などでつくる実行委員会主催)が14日、青森市の県立美術館で開幕した。

 初日は奈良さんが「北へ進路をとる」と題して講演し、祖父が出稼ぎをしたサハリンなどを旅したエピソードを披露。「なぜか分からないが、辺境が好き。そういう所に行けば行くほど、生まれ育った所に近づくような気がする」と語り、自身のルーツを求める旅が創作の下地になっていると明かした。

 奈良さんは東日本大震災後、「自分の時間軸に一本の幹を見つけたい」と自身のルーツを求め、北方に関心を抱くようになった。今回の個展にもサハリン、アフガニスタンや台湾の奥地を訪ねて撮影した写真、旅から着想を得て制作した作品を展示している。

 「いろいろな所に行って見たり聞いたりした経験がどう役立つかは自分でも分かっていない。色やディテールでもないが、どこかで作品に表れてくる」と奈良さん。自身の作風に影響を受けた絵を描く人が最近増えてきたことを挙げ、「表層だけで中身がない。じゃあ中身って何かと考えたとき、こういうこと(旅先で得た経験)なのではないかと思う」と述べた。

 また、自身が絵を描く過程を写真で示しながら説明。途中でイメージを変更することもあるといい、「自分の中に(最初から)描き方があるわけではない。描こうとする気持ちをどういうふうに具体的にしていくか。苦労せずにできる作品は、自分としては気持ちよくない」と語った。

 講演会は事前申込制。定員150人に対し827人の応募があった。12月17日には、むつ市のむつ来さまい館でも行う(定員120人、10月17日から受け付け開始)。個展は来年2月25日まで。

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