【MLB】 どちらの強力打線が上か? レンジャーズ対アストロズのリーグ優勝決定シリーズを展望!

写真:ここまで4戦4ホーマーのアストロズ・アルバレス

 日本時間10月16日から、ア・リーグのリーグチャンピオンシップシリーズが開始される。

 相対するのは、7年連続でリーグチャンピオンシップにたどり着いた第2シードのアストロズと7年ぶりのプレーオフ進出となった第5シードのレンジャーズ。共にテキサス州に本拠地を置く両チームは、レギュラーシーズンを同じ90勝で終え(直接対決の勝敗でアストロズが優勝)、殿堂入り確実の老将に統べられたチームだ。

 リーグチャンピオンシップでこの“ローンスター・シリーズ”が実現するのは史上初どころか、同じ州に本拠地を置くチームが対戦するのも、ア・リーグ西地区同士が対戦するのも史上初。アストロズのベイカー監督とレンジャーズのボウチー監督は合わせて通算4276勝、4度の世界一を経験している百戦錬磨の名将同士。レギュラーシーズンは同じ勝利数でフィニッシュするなど、両チームのつばぜり合いはすさまじく、直接対決では乱闘寸前にヒートアップすることもあった。

 心躍らせる要素には事欠かない好カードが実現したといえるだろう。白熱必至のシリーズを展望していこう。

 現時点で発表・予想される先発マッチアップは以下の通り。

第1戦 レンジャーズ:ジョーダン・モンゴメリー vs. アストロズ:ジャスティン・バーランダー
第2戦 レンジャーズ:ネイサン・イオバルディ vs. アストロズ:フランバー・バルデス
第3戦 レンジャーズ:アンドリュー・ヒーニー vs. アストロズ:クリスチャン・ハビアー
第4戦 レンジャーズ:デーン・ダニング vs. アストロズ:ホセ・ウルキディ
第5戦 レンジャーズ:ジョーダン・モンゴメリー vs. アストロズ:ジャスティン・バーランダー
第6戦 レンジャーズ:ネイサン・イオバルディ vs. アストロズ:フランバー・バルデス
第7戦 レンジャーズ:アンドリュー・ヒーニー vs. アストロズ:クリスチャン・ハビアー

 先発ローテーションの充実度はアストロズに軍配か。シーズン終盤にかけて完璧にピークを合わせてきた40歳のバーランダーが依然エースとしてローテーションを牽引すれば、3番手ハビアーと4番手ウルキディも地区シリーズで好投し、シリーズ突破の原動力となった。2番手バルデスの乱調は気がかりだが、それでもアストロズのローテーションは充実している。

 多くの怪我人に悩まされてきたレンジャーズのローテーションも、ここにきて調子を上げてきた。ワイルドカードシリーズから好投続きのモンゴメリー&イオバルディに加えて、先発・リリーフ両方で活躍するヒーニーの3人が軸となってくる。さらにシーズン中に安定感抜群だったダニングや、地区シリーズで好投したマーティン・ペレス、コディ・ブラッドフォードの両左腕も戦略の一部となるはずだ。

 レンジャーズにとってはマックス・シャーザーの状態が気がかりだ。大テレス筋の故障で9月上旬にはシーズンエンドとも言われたシャーザーだが、諦めずに復帰を目指し、リーグチャンピオンシップから復帰の可能性が現実的になってきた。シャーザーは練習試合で68球を投じ、準備はできていると感じている模様。ただ、球速の回復具合については「二日酔いで投げることはあまりないから」とぼやかし、マイク・マダックス投手コーチも全体的には励まされる内容だったとしながらも「研ぎ澄まされる必要がある」としている(『ダラス・モーニング・ニューズ』。また、終盤に離脱したジョン・グレイにも復帰の可能性が残されている。

 この情報からも、ここはレンジャーズがシャーザーをリリーフで起用することを予想したい。レンジャーズの最大の弱みはブルペンだ。ここまでは守護神ホセ・レクラークとジョシュ・スボーツが好投しているが、セットアップのアロルディス・チャップマンは制球を乱す場面が多い。シャーザーがブルペンの切り札として機能すれば、レンジャーズは弱点を補うことができる。

 対するアストロズのブルペン陣は堅調。ブルペン最強の切り札であるブライアン・アブレイユと安定感ある守護神ライアン・プレスリーを中心に、経験もスペックも兼ね備えるメンバーが揃っている。不安要素になるようには思えない。

 レンジャーズ・アストロズ共にメジャー最高品質の強力打線を擁している。ここまでのプレーオフでは両者の打線が惜しみなく実力を発揮し、ステップを駆け上がってきた。

 プレーオフの鍵となるのが“本塁打”だ。ここまでのプレーオフの試合では実に53.3%が本塁打からの得点となっている。

 それを踏まえると、アストロズ打線はここまで4試合4本塁打のヨーダン・アルバレスと3本塁打のホセ・アブレイユに注目したい。特にアルバレスは打率も.438と恐ろしい打棒を振るっており、アルバレスと勝負するかしないかも焦点となるだろう。

 対して、レンジャーズの注目はプレーオフここまで11四球のコリー・シーガーと、エバン・カーター&ジョシュ・ヤンの新人コンビに注目だ。シーガーはオリオールズとの地区シリーズでは、左投手を当てられてなお勝負を避けられるという貫禄を発揮し、出塁率は.680。地区シリーズでは勝負されるのか、勝負されて本来の打撃を見せてくれるのか、どちらになっても楽しみな顛末になる。カーターとヤンはいずれも打率.400/OPS1.000超えの大暴れで、数々のプレーオフ最年少記録に名を連ねている。特に21歳にして最高級の選球眼を誇るカーターの打席は必見だ。

 逆にここまで本領発揮できていない打者たちの復調が鍵を握るという見方もできる。アストロズはカイル・タッカー、レンジャーズはマーカス・セミエンがここまでプレーオフ打率1割台と低調。特に不動の一番を務めるセミエンの調子は、後を打つシーガーやカーターの前にランナーがいるかに直結する重要な要素だ。アスレチックス時代から辛酸を嘗めてきただけに、打倒アストロズへの思いは強いであろうセミエン。この大一番で奮起してくれるだろうか。

 レギュラーシーズンでは直接対決で9勝4敗、直近の対戦シリーズでは実に39得点を入れてスウィープするなど、アストロズがレンジャーズを圧倒している。しかし、そのときにはカーターはデビューしておらず、ガルシアやヤンは故障で万全の状態ではなかった。アストロズは前回対戦時と同じチームだと思ってかかると痛い目に遭うかもしれない。

 投手陣はタレント揃いのアストロズが上だが、継投策が柔軟性に欠けるベイカー監督と比べ、ボウチー監督はここまでも手元のピースを多様に組み合わせてプレーオフを勝ち上がってきた。さほど大きな力量差があるわけでもないため、勝負を分けるのはやはり打線の出来になってくる。

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