木村伊兵衛の世界観紹介 学芸員が解説

 砺波市美術館で開催されている「木村伊兵衛 写真に生きる」(同美術館、富山新聞社、北國新聞社主催)のギャラリートークが14日行われ、学芸員の長田里恵さんが、小型カメラ「ライカ」を手に生涯写真家として人の暮らしや営みを撮り続けた木村の世界観を解説した。

 長田さんは、小型カメラに写真表現の可能性を見いだし、被写体の一瞬をとらえる「スナップショット」と言われるスタイルを確立し、肖像や舞台写真をはじめ、日本各地や欧州、中国などであるがままの日常を写真に収めた木村の軌跡を紹介した。

 昭和の列島風景のコーナーでは、花火を見るため橋の欄干にすし詰め状態となっている観客をとらえた写真や、ビルの屋根に清涼飲料の瓶を写し込んだ1枚などに触れ「当時の日本を知る貴重な資料で、戦後の時代の特徴が表れている」と指摘した。

 長田さんは「木村さんの写真には古くささを感じず、今でも真新しさを感じる」と魅力を紹介。「一瞬の中にある人の揺れを感じ取り、自分の気持ちを揺さぶられる。今で言う『エモい』に通じるが、若い人こそ見てほしい」と強調した。

 砺波市矢木の瀬戸髙嗣さん(70)は「写真を芸術にするという写真家としての意気込みが伝わった。写真家の草分け的な存在で道を切り開き、世界をまたに撮影して自分の世界観をつくった素晴らしさを学べた」と話した。

 会期は11月5日まで。入場料は一般800円、18歳以下・障害者(介助者1人含む)は無料。

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