〈いしかわ百万石文化祭2023〉国民文化祭開幕 三の丸尚蔵館展始まる

「国宝の中の国宝」の呼び声高い、極彩色豊かな伊藤若冲の国宝「動植綵絵」の(右から)群鶏図、薔薇小禽図などに見入る来場者=金沢市の石川県立美術館

  ●県立美術館・国立工芸館

 いしかわ百万石文化祭2023(第38回国民文化祭および第23回全国障害者芸術・文化祭)は14日開幕し、石川県内各地で多彩な催しが繰り広げられた。メイン行事の「皇居三の丸尚蔵館(しょうぞうかん)収蔵品展 皇室と石川―麗しき美の煌(きら)めき―」(北國新聞社共催)の一般公開が金沢市の県立美術館と国立工芸館で始まり、大勢の来場者が国宝8点を含む珠玉の美術品116点を堪能した。石川で国民文化祭が開催されるのは1992(平成4)年以来31年ぶり。11月26日まで全19市町で展開する。

 三の丸尚蔵館収蔵品展は、同館の地方巡回展として、質、量ともに最大規模の展覧会となる。116点のうち尚蔵館収蔵品は90点で、このほか前田育徳会、県立美術館、国立工芸館などから前田家ゆかりの秀作26点が並ぶ。

 県立美術館では、「花鳥画の到達点」とされる極彩色豊かな伊藤若冲(じゃくちゅう)の国宝「動植綵絵(どうしょくさいえ)」が前後期で2幅ずつ展示される。14日からの前期は、群鶏図と薔薇小禽図(ばらしょうきんず)が並び、ガラスケースぎりぎりまで顔を近づけて見入る若冲ファンの姿も見られた。

 このほか、「やまと絵絵巻」の最高峰と名高い高階隆兼(たかしなたかかね)の「春日権現験記絵(かすがごんげんげんきえ)」や、里帰りした前田家ゆかりの「金沢本万葉集」、日本一の刀工とも称される正宗の傑作「名物太郎作正宗」をはじめとする国宝が、至高の輝きを放った。

 国立工芸館では、金沢出身の島田佳矣(よしなり)が図案を担った「鳳凰菊文様(ほうおうきくもんよう)蒔絵(まきえ)飾棚(かざりだな)」と「鶴桐(つるきり)文様蒔絵飾棚」が地方展で初公開された。1924(大正13)年に、後の昭和天皇の結婚を祝い総理大臣ら文武官一同が献上した2点で、鑑賞者は15日に石川県を訪問される天皇、皇后両陛下にも思いを致し、皇室と石川の縁を感じ取った。

 金沢出身の漆聖(しっせい)・松田権六の「鷺蒔絵筥(さぎまきえばこ)」、小松出身の初代徳田八十吉が中心となり絵付けを手掛けた「萬歳楽置物(まんざいらくおきもの)」など石川ゆかりの先人が皇室に献上した逸品も目を引いた。

 尚蔵館収蔵品展は2020年末、当時首相だった菅義偉氏が飛田秀一北國新聞社会長(国民文化祭実行委文化芸術顧問)とのインタビューで、国民文化祭での特別展開催の方針を示し、実現に至った。会期は11月26日まで。

 ★国民文化祭 地域の文化資源の特色を生かした文化の祭典で、伝統芸能や文学、音楽、美術に加え、食文化を含む生活文化の活動を全国規模で発表したり、参加者が共演・交流したりする場として1986(昭和61)年に始まった。2017(平成29)年からは全国障害者芸術・文化祭と一体的に開催されている。

 ★ロゴマーク 百万石の「百」と「100」の字をループ状にしたデザインで、石川の多彩な伝統や文化を次世代につなぎ、発展させるイメージを表現している。伝統工芸である漆の赤色、金箔(きんぱく)の金色を取り入れた。

青空へ風船を一斉に飛ばし、いしかわ百万石文化祭の開幕を祝った来場者=しいのき迎賓館

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