茨城県龍ケ崎市馴馬町の市歴史民俗資料館が、国指定重要文化財の掛け軸「絹本著色十六羅漢像(けんぽんちゃくしょくじゅうろくらかんぞう)」の複製を公開している。22日まで。実物は市内の寺院が所有する一方、水戸市の県立歴史館に寄託されており、常設展示もないことから、龍ケ崎市教育委員会が広く見てもらおうと4年かけて精巧なレプリカを制作した。
羅漢(阿羅漢)は悟りを得た高僧を指す。掛け軸は全部で16幅あり、1幅に1人ずつ羅漢が描かれている。写実的で、衣装などに精密な模様が施されている点が特徴。龍ケ崎市若柴町の金龍寺が所有する。県立歴史館では劣化を防ぐため常設展示していないという。
市教委によると、伝承では、曹洞宗の開祖・道元が中国で修行を積んで帰る際、南宋王朝の皇帝から贈られた。後に鎌倉の建長寺を経て、鎌倉幕府の執権・北条氏に移った。幕府を滅ぼした新田義貞が金龍寺に納めたとされる。ただ、実際には鎌倉時代後期-南北朝時代前期の日本で作られたと推定できるという。
市教委は2017年度~20年度、専門の業者に委託して複製を制作。実物をスキャナーで読み取って絹の布に印刷、職人が手作業で色を補ったという。費用は計約2千万円。
資料館の担当者は「忠実に再現した市民の宝に親しんでもらえれば」と期待を込めた。入館無料。月曜休み。各日午前9時~午後5時。