“宗教2世”の葛藤を2回シリーズで深掘り。ドラマ編「神の子はつぶやく」には河合優実、田中麗奈、根本真陽らが出演

NHK総合では、10月29日、11月3日に「NHKスペシャル “宗教2世”を生きる」(10月29日午後9:00、11月3日午後10:00)を2回シリーズとして放送。29日はドキュメンタリー編「“信じる・信じない”を越えて」(仮)、11月3日はドラマ編「神の子はつぶやく」をおくる。

親が信じる宗教の信仰を強いられ、信仰の名の下に「人生の選択の自由を奪われ」「人権を侵された」と訴える“宗教2世”たち。旧統一教会をめぐって国が解散命令請求へと動く中、長年社会から見過ごされてきた問題が浮き彫りになる一方、複雑な胸中を吐露する人もいる。自らを“宗教2世”と呼び、さまざまな形で声を上げ始めた人たちを、長期取材によるドキュメンタリーと、当事者の実体験に基づくドラマの全2回シリーズで描く。

29日のドキュメンタリー編「“信じる・信じない”を越えて」(仮)では、社会問題や人権問題が指摘されてきた複数の宗教の“2世”たちを取材。子どもたちを宗教で縛ってきた親世代にあえて向き合う人や、特定の信仰を持たない友人との対話に臨む人も。新たな一歩を踏み出そうとする“宗教2世”たちの今を見つめ、“信じる・信じない”を越えた先にある社会の在りようを考えていく。

そして、11月3日のドラマ編「神の子はつぶやく」には、河合優実、田中麗奈、根本真陽、杉田雷麟、岩男海男、工藤遥、和田光沙、尾上寛之、斎藤加奈子、吹越満、萩原聖人、渋川清彦、酒井若菜、森山未來が出演する。

“宗教2世”への取材からは、知られざる葛藤が見えてきた。ドラマ編では、善と悪を分ける“神の教え”と“親への愛”のはざまで激しく揺れる心に光を当て、姉妹の“個”の視点を通じ、深く掘り下げて映し出す。

木下家の1日は、遥(河合)、妹の祈(根本)、そして母・愛子(田中)による食事の感謝の“祈り”から始まる。遥は、教団の教えに反するからと、高校生らしい友達との遊びや部活を一切禁じられてきた。ある日、同じ教団の信者で同級生の義也とカラオケに繰り出すが、愛子の怒りを買い、やがて学校へ通うことを禁じられてしまう。かつて失敗が多く苦労してきた愛子は、誘惑の多い世界で娘に同じ苦しみを絶対に経験させたくなかった。

家族の中でただ1人信者ではない父・信二(森山)は、土日を返上して働いても貧しさから抜け出せず、家族に申し訳ないと感じていた。休みを得られたある週末、家族みんなで水族館に行く提案をする。やっとかなった家族のひと時。信二は、いとしい娘たちが「自分が信じる道を生きる」ことを願った。だがそれは、父の最期の愛情となってしまう。遥は父の急死を目の当たりにし、家族よりも神を優先させた母へ怒りをぶつけ、家を飛び出してしまう。一方、祈は、孤独になってしまった母を守るため、より強い神への誓いを立てる。

初めて接するネオンに包まれた“外”の世界で、遥は何をすればいいか、どこに行けばいいかと混乱する。そして、通りすがりの男に声をかけられる。その男のつながりでキャバクラで働く道を得た遥は、思いがけず自分の心に押し込めていたものを噴出させる。それは、神から離れ、母と妹を置き去りにしてきた罪の意識であり、遥を強く縛り続けていた。

数年が経ち、祈は変貌を遂げた姉の姿を目撃。「家から抜け出しても神様が心から居なくならない」と葛藤する遥のつぶやきを聞き、祈は遥の手を包む。姉がようやく吐露できた苦しみに自らの思いを重ね合わせるように。そして2人は、母のもとへと向かう。子どもたちをおなかに宿した時、その幸せを願ったはずの愛子は、果たして遥と祈を受け入れることができるのか。

作品の演出を務めた柴田岳志氏は「このドラマは、“宗教2世”とその家族に話を聞くことから作っていきました。“信仰”という親の価値観を強いられ、幼い頃から社会との関わりを制限されて育った子どもたちが抱える深い葛藤。一方、親はなぜ宗教を信じるに至ったのか。そこから見えてきたのは、今の社会で生きづらさを抱えながらも相談相手もおらず悩む女性たちの姿。そして宗教がその“受け皿”として機能しているという側面でもありました。これは、特殊な人たちの話ではなく、誰にでも起きうるかもしれない、そんな物語です」と、作品について解説している。

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