認知症 見守り拡大 茨城県の認定事業所1700突破 「気持ちに寄り添う対応」

県の「認知症の人にやさしい事業所」の認定証が掲示された坂東太郎常陸太田総本店=常陸太田市金井町

認知症患者の見守りができる店舗などを茨城県が認定する「認知症の人にやさしい事業所」が、開始から約1年半で1700カ所を突破した。認知症への理解を促し、早期発見につなげるのが狙いで、スーパーや金融機関、飲食店などの間で優しさの輪が広がる。県内高齢者の7人に1人が認知症とされる中、県健康推進課は「企業の共感が確実に得られている」と手応えを示し、5千カ所の認定を目指す。

■サポーター在籍

「認知症の方の気持ちに寄り添った対応を心がけている」

外食チェーン・坂東太郎の常陸太田総本店(同県常陸太田市)の女将(おかみ)、関愛花さん(43)は他の従業員とともに、認知症の可能性がある人やお年寄りに温かい目を向ける。

同店は7月、声かけや見守りができる県の「認知症の人にやさしい事業所」に認定された。トイレから客室に戻ることができない、支払い機の使い方が分からないなどの困り事にも丁寧に対応する。

認定事業所の条件の一つは、認知症の正しい理解と対応方法を学ぶ「認知症サポーター養成講座」の受講者が1人以上いること。

同社は従業員の受講と合わせ、店舗レベルでの認定取得を進め、現在は数十店に拡大した。日頃からおもてなしに力を入れ、「優しさ」を重視していることから、取得へ積極的に取り組む。

サポーターになった関さんは「認知症の方の立場で考えられるようになった。理解が進むように役立ちたい」と語る。

■認定ステッカー

県が認定を始めたのは昨年4月。同課によると、9月末時点で1726カ所に上る。このうち、銀行や郵便局などの金融機関が800カ所超と最も多く、スーパーやドラッグストアなどの「小売」や「理容・美容業」、飲食など「その他」もそれぞれ300カ所近く認められた。

高齢者が多く利用する事業所に対し、各地の商工会議所などを通して取得を呼びかけてきた。認められた事業所は、認定証や認定ステッカーを掲示できるほか、県の外部サイトに事業所名が掲載される。

同課の大沢和則地域包括ケア推進室長は「企業や店舗のイメージ向上につながる面もあり、取得に前向きな事業所は多い。認証の輪が広がっている」と手応えを示す。

■理解と早期発見

高齢化とともに県内の認知症患者は増えている。

県の推計によると、県内の65歳以上人口のうち認知症患者の割合は2020年は16%だった。推計では25年に19%、35年には25%と増加し、高齢者の4人に1人が認知症になるとみている。

一方、医療の進展で、早期治療によって認知症の進行は抑えられるとされ、早期発見が重要となる。認定制度により、誰もが快適に過ごせるバリアフリー社会の実現とともに、認知症への理解促進、早期発見へと結び付けたい考えだ。

県は25年度までには認定を5千事業所まで広げる目標を掲げ、今後はボウリング場やカラオケ店など業種を広げて呼びかける。認知症を巡るチェックシートの配布なども行っており、大沢室長は「他の事業と合わせて推進していきたい」と話す。

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