与野党激しく火花 衆院長崎4区補選 物価高への対応争点に

候補者の演説を聞く市民。衆院長崎4区補選では物価高への対応が争点となっている=佐世保市内

 与野党一騎打ちとなった衆院長崎4区補選は、物価高への対応が争点となっている。政府・与党は月内に取りまとめる経済対策で物価高や賃上げへの対応を打ち出し「国民生活を守る」(岸田文雄首相)と強調。税収増を背景に「減税」発言も相次ぐ。対する立憲民主は「選挙前に減税、減税と急に叫び始めるのは無責任だ」(泉健太代表)と批判。物価高を上回る賃金上昇やエネルギー手当の実現などを掲げ、対抗心を燃やす。22日の投開票に向け、激しい火花が散っている。
 「生活を苦しめている物価高、燃料高には早急に手を打たなければならない」。自民新人、金子容三候補(40)は12日、平戸市での街頭演説でこう強調した。
 告示日に演説した茂木敏充党幹事長も「物価高、賃上げに対応した経済対策を取りまとめ、速やかに実行に移す」。党内では補選の先にある衆院解散・総選挙も見据え、大型の財政出動を唱える声が膨らむ。
 ウクライナ侵攻が長期化。原油高や円安による原材料コストの上昇を背景にした物価高や燃料価格の高騰に歯止めがかからない。家計を圧迫し続ける現状に4区内の自民市議の一人は「本来、物価高は世界的な問題。政府・与党が無策だからだ、と単純につなげられると票に影響する」と気にかける。
 物価高による家計の負担は今月からさらに重くなった。調査会社の帝国データバンクの調べによると、食用油など4500品目以上の食品が値上がりした。入園料などのサービス価格も上がった。
 平戸市田平町の直売所運営組合の北村英治組合長(69)は「コロナ禍が一段落し、これからという時に物価高。あらゆるところに跳ね返ってきて、市民はどうすることもできない」と話す。
 「今こそ経済成長の果実を国民に還元すべきだ」と聴き心地の良い言葉を語る岸田首相に対し、立民は「選挙対策だ」と批判する。
 自民内で減税発言が相次いでいることにも、告示日に応援に駆けつけた野田国義参院議員が「防衛増税を横に置き、また与党から変な話が聞こえている。偽り、まやかしの政治だ」とやり玉に挙げた。泉代表も佐世保市で「物価高は岸田政権の無為無策、遅れによって今の状態がある」と指摘した。
 ただ経済対策の取りまとめの中で自民の減税実施が現実味を帯びてきた場合、「有権者の視線、関心がどれだけ自民に寄ってしまうのか」(野党市議)と懸念する声もある。比例九州前職の末次精一候補(60)は「ばらまきは税金の無駄遣い。さらなる物価高騰をもたらす恐れもある」とけん制する。
 与野党の応酬が続く中、北村組合長はこう注文する。「国会議員は現状の厳しさを本当に感じているのか。インボイス(適格請求書)制度導入もあり、商売をやっている側が受ける打撃は計り知れない。根本的な対策を考えてほしい」

© 株式会社長崎新聞社