迫る2024年残業規制強化 バス会社、効率化に頭悩ます 人繰り「既にぎりぎり」

弘南バスが運行する路線バス。2024年問題を受け一部経路が変更となる可能性がある=13日、弘前市
十和田観光電鉄が企業の送迎で使用しているバス。運転手の勤務体系の調整が進む=12日、十和田市

 青森県内のバス事業者が、国の残業規制強化に伴う「2024年問題」の対応に頭を悩ませている。運転手の拘束時間が短くなる上、退勤から次の出勤までの休息時間が長くなることから、各社は路線の経路変更や貸し切りツアーの行程調整を検討中だ。慢性的な運転手不足で「既にぎりぎりの勤務体系」(業界関係者)にある中、業務の効率化を迫られている。

 24年4月以降の残業規制適用に合わせ、物流のトラックやバスの運転手の1日当たり最長拘束時間は現行より1時間短い15時間に短縮される。1日の休息時間も現行の8時間以上から「11時間以上を基本に、9時間を下回らない」に変更となる。

 弘南バス(本社・弘前市)は、路線バスの一部経路を変更し利用者が少ない区間の運行を取りやめる方針だ。通院目的の利用が多い時間帯以外は病院近くの停留所に止まらないなど、運行ダイヤの見直しも検討している。

 貸し切りバスでは夜間の桜観賞やねぶた祭のツアーの時間を調整したり、翌朝の出発時間を昼ごろに遅らせたりするなどの対応を想定。ただ、影響は避けられず、加福憲三観光部長は「早朝などの時間に人員を配置するのは難しく、仕事を受注できないケースが増える可能性がある」と言う。

 十和田観光電鉄(本社・十和田市)は、早朝と夕刻に運行している企業の従業員送迎バスの運行時間や方法を見直すなどの対策を進めている。早朝に送迎バスを運転した場合に夕刻の送迎は行わず、別の観光客対応の運行業務に移るなどして長時間勤務にならないようにする。

 運転手を増やせば、1人当たりの労働時間が減っても現行の業務量を維持できるが、人口減少や少子高齢化を背景に新規採用は難しく、県バス協会の池田守専務は「2024年問題への対応以前に運転手が足りない」と語る。同協会によると、県内でバス事業を営む主要6社の運転手数は23年4月現在、965人で1社当たり11.7人不足している。

 新型コロナ禍で落ち込んだ観光需要が回復する中、事業者が旅行会社からの貸し切りバスの発注に対応できないケースも。十和田観光電鉄の佐藤行洋代表は「他社を紹介するなどして旅行会社とのつながりを維持している」と明かす。ジェイアールバス東北(本社・仙台市)は貸し切りバスの運転手を確保するため、青森、盛岡両駅と東京ディズニーランドを結ぶ高速バスを青森発便で11月15日まで、東京発便で同16日まで運休することを決めた。

 国は人手確保策として外国人労働者の在留資格「特定技能」の対象にバス運転手を追加する方向で調整している。県バス協会の池田専務は「外国人運転手の活用を考える時期に来ている」と語る。

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