高速100Rで2台抜き。ZENT立川が魅せたキレキレのオーバーテイクショー「最後のオートポリス、スッキリと終えられました」

 スーパーGT第7戦オートポリスの前半戦でMVPをひとり挙げるなら、今回は間違いなくこの男だった。今年でスーパーGT500クラスからの引退を表明して、最後のオートポリスとなる38号車ZENT CERUMO GR Supraの立川祐路、その立川が予選7番手から魅せた。

チャンスでは時間をかけずに一発でオーバーテイクを決めるのが立川の走りの特徴。表彰台には届かなかったが、満足の行く走りができたようだ

 スタートを務めた立川祐路は10周目には前を行く14号車ENEOS X PRIME GR Supra、37号車Deloitte TOM’S GR Supraをオーバーテイクして4番手まで順位を上げたところで、2番手争いをしていた39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraと17号車Astemo NSX-GTの背後についた。

 そして、39号車と17号車がバトルをしている第一ヘアピンの日立 Astemoコーナーを立ち上がったところでアウト側にマシンを振ると、その後の高速100Rオーナーで競った2台のスキを突いて、アウト側から一気に2台をオーバーテイクする離れ技を見せた。

 タイヤカスの多いオートポリスで高速コーナーでアウト側から攻めるのはリスクが大きく、わずかなコントロールミスでコース外にすっ飛んでしまう。その100Rで、しかも2台まとめてオーバーテイクする姿は、チャンスがあれば一発で相手を仕留める立川らしい、キレッキレの走りだった。

「まあ、あんなもんかな。普通です(ニヤリ)」と、レース後にクールに第一声を放つ立川。

「これが本来というか普通にいつもこれくらいやっていないといけないと思うので。ひさびさにというかね、今日はずっと攻めのレースができた。そういった戦いができる状態のクルマだったので。今シーズン途中からそのようなクルマになってきているので、その結果もあると思います」と、立川節を続ける。

 一方、立川の2台抜きを許してしまった17号車の松下信治も「39号車とやり合っている時に、立川さんにアウト側から行かれてしまいました。うまいなあと思いましたね。やられました」と、立川のパフォーマンスを認める。

 その松下もまた、6番手スタートからオープニングラップで2台を抜き、3番手まで順位を上げる速さとキレを見せていた。立川と松下のオーバーテイクショーは今回のレースの前半戦のハイライトとなった。

 結果的にスタートから15周目まででコース上で4台をオーバーテイクを決めた立川祐路、そのオーバーテイクの鋭さはまだまだ健在だ。

「結構、このサーキットはGT300クラスがいてもなかなかオーバーテイクが難しいですけど、ちょっとしたバトル中とか、GT300が絡んだときとかに隙が生まれるので、そこをうまく突けたし、隙あらば行くぞというスタンスで走れましたね。それができたのも、そういうクルマだったので、クルマとしては本当に全体的によかったですね」

 自らのドライビングよりも、立川は謙虚にクルマとタイヤの状態に感謝を述べる。

「ここはどうしてもピックアップ(タイヤカスが飛んで行かずに自分のタイヤ表面についてグリップダウンを招く症状)する。自分ももちろん、ピックアップしているけど、それが少ないクルマ作りだったり、タイヤ選択ができたと思います。今回はタイヤ選択もスープラ勢でもバラバラな選択で、そういう意味ではサーキットに来る前からの準備を含めて、チームがいい仕事をしてくれたおかげだと思います。今回の敵はピックアップだったので、ピックアップしないようにとか、絶対にしてしまうのですけど、なるべく取れるように、そのあたりはすごく気を遣って走っていました」

 51周目の2度目のピットインでマシンを降りて石浦宏明に代わった立川。最後のオートポリスを走り終えると、テレビカメラに向けてサムアップのポーズを見せた。

「今日は自分的には最初から最後まで満足できるというか、いいレースができたと思うのでスッキリしました。最後のオートポリス、スッキリと終えられました」

 石浦に交代した直後、38号車はピット作業の早さとアンダーカットが効き、一時トップに立ったが、早めのピット戦略で最後のスティントが長くなったこともあり、結果的に4番手でレースを終えた。

「タイミングでうまく前に出れて、一瞬、表彰台に行けるかなと思いましたけど、最後の前の3台は正直、ペースを見ても速かったので難しかったので、石浦もその後ろできちんとロングスティントを頑張って耐えてゴールしてくれたので、よかったです(苦笑)」と立川はチームメイトの健闘を讃えて最後のオートポリスを後にした。

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