新聞週間

 谷川俊太郎さんに「ほん」という詩がある。〈ほんはほんとうは/しろいかみのままでいたかった/もっとほんとのことをいうと/みどりのはのしげるきのままでいたかった〉…▲それでも、もう本にされてしまったのだからと割り切り、わが身に印刷された活字を読んでみる。本とは心を伝えるものだと分かり、〈ほんはほんでいることが/ほんのすこしうれしくなった〉と詩は結ばれる▲新聞も紙でできている。読む人に「難しい」「とっつきにくい」と思わせるようでは、緑の葉の茂る木のままでいたかった…と、紙は身の上を嘆くだろう▲読者のお一人から数日前に手紙が届いた。ひと月に何度か、紙面の感想や日ごろ感じることを丁寧につづり、寄せてくださる。先日、気になっているある作家の本を書店で開いてみたらしい。〈途端に、横文字の多さに驚きました。…なかなか読みづらく、大変です〉と手紙にあった▲つい、わが身を省みる。なじみの薄い言葉を避けて、やさしく書いているか。小難しい言い回しを、さも分かったように使っていないか▲きのう新聞週間が始まった。情報を、ニュースの意味を、人の心を、やさしく正しく伝え、読む人に〈ほんのすこしうれしくなった〉と思ってもらっているか。私たち伝える側が背筋を伸ばす時でもある。(徹)

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