「新版画」の技、間近でじっくり 青森・弘前市で実演解説イベント

新版画の摺りを実演する渡辺英次さん(右)と解説の渡邊章一郎さん(中央奥)

 国内外で人気が再燃している「新版画」の技を間近で見学できるイベントが15日、弘前市立博物館で開かれた。渡邊木版美術画舗(東京)の3代目店主・渡邊章一郎さん(64)の解説で、摺師(すりし)の渡辺英次さん(62)が摺りを披露。濃淡の藍色を重ねて生み出される深みのある色合いや奥行きの表現に、来場者たちがじっと見入った。

 新版画は、江戸時代に確立された浮世絵木版画(錦絵)の伝統的な技を使った、明治以降の画家による新しい木版画の取り組み。西洋画の技法を取り入れたリアルな陰影表現や華やかな色使いが特長で、版元(出版社)の渡邊版画店(現・渡邊木版美術画舗)の渡邊庄三郎(1885~1962年)がプロデューサー的な役割を果たし、世に広めた。章一郎さんは庄三郎の孫。

 同館ロビーの会場で、渡辺さんは風景画家・川瀬巴水の「東京二十景 荒川の月」の摺りを実演。木版に丁寧に色を置き、和紙に押しつけ、ばれんで摺る。この工程を何度も繰り返しながら、ばれんの摺り跡を残す「ざら摺り」や、空や水の色合いにグラデーションを作る「ぼかし摺り」などを披露した。

 渡邊さんは「時代の流行を捉えて版元が絵師にコンセプトを注文して描かれた浮世絵版画に対し、新版画は絵師が描きたいものを描いている。それゆえ、新版画は絵師の個性が表れる」などと解説した。

 イベントは、同館で開催中の特別企画展「THE新版画~版元・渡邊庄三郎の挑戦」(東奥日報社などでつくる実行委員会と同館が主催。11月26日まで)の関連企画。

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