香川県議の海外派遣を巡る議員発言 「判決文の引用」も削除…動議への弁明も議長職権で一部削除命じる

「費用が高すぎる」と批判の声が上がっている香川県議の海外派遣を巡る議員の発言がさらに削除です。北米訪問を「観光旅行」と表現した議員の発言が動議によって削除されましたが、この動議の際の「弁明」も議長が一部の削除を命じました。その中には、裁判所の判決文の引用も含まれていることが分かりました。

9月19日の香川県議会の代表質問で、立憲・市民派ネットの植田真紀議員が知事や県議らのアメリカでの行程について「観光旅行」と表現し、見直す考えを知事に質しました。

この発言について、10月4日の本会議で自民党香川県政会の議員が「事実誤認だ」などとして削除を求める動議を提出。これに対し、植田議員が弁明しましたが、新田耕造議長が「議長職権」によりこの弁明の発言の一部も議事録から削除を命じました。

(削除動議に対する弁明をする/植田真紀 議員)
「2021年12月、議員派遣の旅費返還を求めた住民訴訟で、高松地裁は、【削除部分:「実質的には海外視察の名を借りた観光といえる」と結論づけ、】20人に対して757万円の返還を命じました」

市民オンブズ香川は2016年から17年にかけて香川県議が行った南米やヨーロッパなどへの4件の海外視察に「違法な支出」があるとして返還を求め提訴。

高松地裁は2021年、視察の訪問場所や内容から「実質的には観光と言わざるを得ないものもあった」と指摘し、参加した議員20人に費用の一部または全額、合わせて約760万円を返還させるよう知事に命じる判決を言い渡しました。(県側は控訴せず判決は確定)

新田議長は10月4日の植田議員の弁明のうち、判決文からの引用2カ所を含む8カ所の削除を命じました。

削除の理由は明らかにされず、植田議員は16日午前、新田議長に宛てた抗議文を三好謙一議会事務局長に手渡しました。

(香川県議会事務局/三好謙一 事務局長)
Q.植田さんの弁明について削除した理由は何ですか?
「コメントする立場にはありませんから、私。事実誤認の部分だと議長も説明されてたと思います」

Q.裁判所の判決文に書かれてることですよ
「ですから引用する部分と……それが正確に引用されてない部分があったと思うので……。きょうあすは議長が出張でいませんので。そういうお話があったということはお伝えしておきます」
Q.取材に応じてくださるんですか、議長は?
「議長の了解を得ないと私の立場でどうこう言える問題じゃないので」

(香川県議会/植田真紀 議員)
「(削除を命じられたのは)地裁判決からの引用ですし、私は同じ言葉を6月議会の(議員の海外派遣に対する)反対討論でも使っています。それなのにそこでは問題にならずなぜ今回は問題にするのか。(議員の発言を)恣意的に削除されるということは本当に民主主義の破壊」

地方自治に詳しい香川大学法学部の三野靖教授は「よほど差別的な発言でもない限り、議員の発言を議長の権限だけで削除するのは異例だ」と指摘します。

(香川大学法学部/三野靖 教授)
「議会の議事録をなぜ残すかというと後世で検証するためなんですね。誰が何を言ったかというのもありますけど、いろんな政策とか自治体の決定ごとがどういう過程で審議されて、どういう立場でそれぞれの議員が関わったかということを検証するためにあるんですね。それを実際にあった発言をさほど合理的な理由もなく削除するっていうのは、後の検証ができなくなりますから大きな問題だと思います」

(記者)
「『実質的には観光』。これは過去の香川県議の海外視察について裁判所が厳しく指摘した文言です。今回、公費を使って海外を訪れようとしている議員たちがすべきなのは、これを議事録から削除して『なかったことにする』ことではなく、しっかりと胸に刻んで県民に納得される海外訪問にすることではないでしょうか」

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