谷村新司さん

 「…さあ、おじさんのステージも残すところ、あと1時間半となってしまいました」…どはは。軽妙なトークに夏の稲佐山が笑う。次の曲はお待ちかねの「チャンピオン」。〈つかみかけた熱い腕を/ふりほどいて君は出てゆく…♪〉。ネットで見つけたのは1996年の映像▲広島原爆の日に長崎から平和を歌う。さだまさしさんが呼びかけ人の野外コンサート「夏・長崎から」に、おじさんは何回も登場している。さださんにとっては4学年上の兄貴分で大切な音楽仲間、長崎で歌う姿をご記憶の読者も多かろう▲お日さまの「日」にうさぎ年の「卯」と書くこの字が人名漢字に加わったのはこの曲の“功績”とされている。ソロでの代表曲「昴-すばる」は80年の作品▲シンガー・ソングライターの谷村新司さんが亡くなった。〈我は行く/蒼白き頬のままで〉…決然と進む旅人を朗々と歌った彼は若者たちにこんなエールを送っている。「鳥も飛行機も飛ぶ時は向かい風」▲ところで冒頭の映像、懐かしく眺めながら、歌詞なんか一つも見ずにこの曲が歌えそうなことに気がついた。彼らがヒット曲を連発していた頃、中学生だった筆者はどんぴしゃのアリス世代▲「帰らざる日々」「遠くで汽笛を聞きながら」「ジョニーの子守唄」-帰り道、何を歌おう。(智)

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