【おんなの目】憂鬱のお年頃

 先日、唐津に住むトミコさんから筆圧の高い字で分厚い手紙が届いた。

 「掃除、洗濯、炊事、買い物、ゴミ出し等々。生活していくのは大変。もう飽きた。七十八年間の内、五十五年は中心で家事をやってきたわよ。農家だったから小学四年生頃には、野良から疲れて帰る両親の為にご飯を炊いて惣菜も作った。長く家事やってきたからもういい。料理も探求していくと飽きることなく興味深いものだろうけれど。ほら、田畑さんは料理好きが高じてお弁当屋さん開いたでしょ。でも私は、やらねば一日は回らないから家事やってるけれど、もうしたくないわ。友人には富裕層はいないから、自分でしている。皆、腰が痛いなんて言いながら家族の面倒まで見ているわ。あなたは飽きていない?」

 返信「もちろん飽きているわよ。飽きるほど平穏な平和な日々に感謝しているけれど、ふっと振り向くと冷たい風が髪を揺らすのよね。風がしっこく身体にまとわりつく日があるのよね。誰かが『女は気をつけねば、まんまを焚くだけの一生になってしまう』と書いていた。あなたは若い頃、絵を描いていたでしょ。家事はそこそこにしてあなたの芯をもう一度掻き立てて描いてみて。きっと飽きることなんてないと思う。描けたら見せて。待ってるわ。我が同志よ」

© 株式会社サンデー山口