十三湖(青森県)に新人シジミ漁師、一気に4人誕生

今年シジミ漁師としてデビューした(左から)新岡さん、葛西さん、梶浦さん、小寺さん。「多くの人においしいシジミを届けたい」と意気込む=14日、五所川原市十三の十三漁港

 全国有数のシジミ産地である十三湖で今年、20、30代の4人がシジミ漁師としての第一歩を踏み出した。4人が所属する十三漁協(青森県五所川原市)によると、少子高齢化などを背景に漁師のなり手が少なくなる中、同じ年に同漁協から4人がデビューするのは珍しい。1年目の漁期を終えた4人は「大変だけどやりがいがある」「早くベテランに追いつきたい」と、それぞれ思いを語った。

 4人はいずれも同市十三地区に住む梶浦優太郎さん(27)、新岡嗣久さん(30)、小寺健太さん(33)、葛西緩治(かんじ)さん(30)。

 梶浦さん、新岡さん、小寺さんは父親が現役のシジミ漁師。葛西さんは、妻の実家が十三地区でシジミ販売店を営んでいる。4人とも別の業種からの転職組で、父親などに漁の仕方を学んだ。

 それぞれ朝6時ごろから準備をし、船に乗って7時から一人で漁に出る。1日の漁獲量の上限である140キロを取り、帰港後に貝とごみなどを手作業で仕分けるのが流れだ。

 十三湖では、同漁協と車力漁協(つがる市)の漁師が操業している。シジミ漁は毎年4月10日から10月15日まで行われ、産卵期に当たる7月上旬から8月中旬までは休漁。水、日曜は休漁と決まっており、今年は10月15日が日曜だったため、同14日が漁の最終日となった。

 これまで貨物船の乗組員をしていた梶浦さんは「まだまだ手探り」と1年目を振り返りつつ、「他県で暮らし、十三湖のシジミのおいしさをあらためて実感した。おいしいシジミを多くの人に食べてもらいたい」と意欲を語った。青森市出身で、トラック運転手から転職した小寺さんは「1年目は何も思う間もなく終わってしまった感じ。来年から本格的に頑張りたい」と力を込めた。

 建設会社の事務職との“二刀流”で漁をする新岡さんは「一般の会社に勤めるのと比べて、シジミ漁師は仕事の時間が半日。時間を有効に使える」と語り、「ほかの3人には負けたくない」と来季へ闘志を燃やした。

 機械工から転職した葛西さんは「会社に使われる立場ではないので自由度があり、頑張った分だけ報われるのがいい」と漁師の魅力を語り「シジミ漁は楽しい。同じ場所でも、ベテランはより多くの量を取る。早く追いつけるようにしたい」と語った。

 十三漁協では、シジミ採取権を持つ人が最大105人と決まっているが、現在は新加入の4人を含めて98人と空きがある状態。梶浦さんの父親で、同漁協の組合長を務める武也さん(55)は「高齢の漁師が多くなり、世代交代をしていかなければいけない時期に来ている」と4人の加入を歓迎し、「1年目なので技術はまだまだだが、年配の先輩たちの中に入っていこうとする努力は見られた。若い感性を生かし、組合や地域を引っ張っていく存在になってほしい」と期待を込めた。

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