株主優待はどう選ぶべき?よゐこ有野「自分に合ってる気がしてきた」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年10月は金融アナリストの三井智映子先生に、株式投資について伺いました。

今回は、「株主優待」について解説いただきます。


有野晋哉(以下、有野):ちょっと涼しくなったと思ったら、もうすぐ年末か。ついこの前、お中元どうしようか……って考えたとこやったのに、もう少ししたらお歳暮の準備をしないといけない! 時間が経つのが早すぎて、まだ『ピクミン4』の封さえ切ってないのに。はあ、忙しい。

三井智映子(以下、三井):本当に、時間が経つのは早いですよね。昔から「相場は生き物」と言われていますが、1日でも同じ動きをすることがなく、株や為替の値動きを見ているだけでも、時間があっという間に過ぎていきます。

有野:おぉ、さすが先生! 「相場は生き物」なんて、まさに投資をやってる人みたいなセリフでかっこいいですね〜、僕も一度くらいそんなこと言ってみたいです(笑) 「ピクミンは生き物!」やと、ただのゲーマーやし……いつになったら、先生みたいに言えるようになりますかね?

三井:これから、いつでも言えるようになりますよ! 投資初心者の方には、いつも「日々の相場の値動きに一喜一憂しないこと」とお伝えしているのですが、私は短期的なトレードもすることがあるので、移動中や空き時間には相場の動きをチェックしてしまいます。

有野:え~っ、この前先生にそう言われたから、気にするの止めようと思ったのに(笑)

三井:有野さんがやられているNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)は、あくまで長期的な視点に立った投資です。1日や数日間の値動きによって利益を得ようとする手法では、やはり足元の値動きも重要なんですよ。

有野:株価の上がり下がりで利益が変わるんやから、そうなりますよね。でも、長期目線で考えてたとしても、自分が何千万円とか何億円とか投資してたら気になっちゃうんじゃないですかね?

三井:そのくらいの規模の投資をするようになる頃には、有野さんの投資スキルも上がっているでしょう。それに、いまそうなった時の心配をしても仕方ないですよ(笑)

有野:その通り! 捕らぬ狸の皮算用ってやつだ。ああ恥ずかしい(笑)

株主優待は日本独自の制度

三井:さて、前回は株式投資の「配当」についてお話ししました。「高配当株への投資」は、投資に入りやすい投資手法の1つだと思いますが、いかがでしたか?

有野:「配当利回り5%の銘柄を20年間持っていれば、投資元本の元が取れる」っていう話は、そんな考え方があるんやって、なかなか興味深い話でしたね。ただ、やっぱり業績なんかは調べないといけない、って聞くと、初心者からしたら「やっぱり難しそうやなぁ……」と感じてしまいます。

三井:長期間、高配当株を持っていれば元が取れるというのは、あくまで理論上の話。実際には、業績や財務が悪化して配当が減ったり、無配に転落してしまったりする可能性があります。それを避けるためには、業績やセクターの動向などをチェックする必要があるんです。

有野:いまから20年っていったら、僕も70代になってるもんなぁ。それだけ長い期間だと、その会社が潰れてしまう可能性もあるし、社長が変わって業務内容も変わる可能性だってありますもんね?

三井:そうです。では今回は、その配当とは別に、初心者の方が関心を持ちやすい、「株主優待」についてお話します。

有野:待ってました! 株主優待の話は、この「お金の学園」の授業でもチラホラ出てきました。投資の話を家族とした時に、我が家でも奥さんや子どもの反応が良かったのも株主優待でした。株主優待の本も買いました。でも、まだ株は買ってません(笑)

三井:優待狙いにも良し悪しはありますが、「どうせ株式投資をするなら、何かをもらいながらやる方が楽しい」というのは、優待狙いの投資家によくある考えだと思います。では、そもそも「株主優待」とは何なのか、というところからお話していきます。

有野:「株主さん、我が社の商品は良いので是非使ってください!」って、新商品や定番品を配ってくれてるだけやと思ってた! 先生、株主優待の目的は何なんですか?

三井:配当は、株主に利益を還元するために、企業が稼いだ利益の中から捻出します。「株主還元」という意味では優待もそれに近く、自社の株を持っている株主に対するプレゼントを贈るわけですね。それこそ、お中元とかお歳暮に近い制度と言っていいと思います。

有野:会社からのお歳暮か。どうせなら、なるべくいいモノをたくさんもらいたいですね(笑)

三井:お中元やお歳暮もそうですが、日本では相手の家に訪れる際、「手土産」を持参しますよね。そのような「贈り物の文化」が、株主優待の由来だと言われています。そういう由来だけあって、株主優待は世界でも珍しい、日本独自の制度なんです。

有野:へぇ〜、じゃあ外国の株を買っても、優待品をもらえないんですね。

三井:海外にも優待を導入している企業はありますが、日本のように制度として定着しているわけではないので、それほど多くはありません。それに、海外では「優待を贈るくらいなら、その資金を自社の成長のために使ったり、配当を増やしたりすべき」という指摘を株主から受けることになるでしょうね。

有野:えぇ、海外の株主は真面目やな〜。もらえるもんは、もらっといたらええやん、って思いますけど(笑)

株主優待で家族からの評価が上がる?

三井:株主優待は法人名義だともらえず、あくまで個人投資家のみが受け取れる制度です。個人投資家に対して、「株主になって、会社を応援してもらいたい」という発想で導入する企業が多いでしょう。

有野:トヨタ自動車の株を持ってたら、クルマがもらえたりしないんですか?

三井:さすがに、自動車はもらえないですね(笑) それに、残念ながらトヨタ自動車は株主優待制度を導入していません。

有野:「ケチ!」って思ってしまった。さすがトヨタ、グローバルですね。株主優待やってたら、海外の株主に指摘されるやつや(笑)

三井:2023年9月末現在で、株主優待制度を導入している企業は1,400社以上。上場企業の数がだいたい4,000社程度なので、3社に1社以上が優待制度を導入しています。

有野:食肉加工のメーカーなら、株主優待でお歳暮でよくあるハムがもらえるっていうのはわかるんです。でも、モノじゃなくて、たとえばアプリを作っている会社とか、株主にあげられるようなものを扱っていない場合はどうなるんですか?

三井:おっしゃるように、小売や外食、食品会社などでは、自社製品を優待品として送る企業は多いですね。サービス業でも「自社サービス利用券」のような優待のほかに、お米券やQUOカードだったり、結婚式でもらうようなカタログギフトだったり、会社とは全く関係ないものを優待品として送るケースもあります。

有野:お米券か~。もらったら嬉しいけど、配当金と変わらへんなぁ(笑) でも、自分の会社に関係ないものでもいいんですね。

三井:その手の優待は、家計の足しにもなりますからね。確かに、外食や食品会社、飲料会社などの優待の人気が高い傾向はあります。優待の内容によっては、家庭内の有野さんの評価が上がるかもしれませんよ!

有野:え、家庭内の評価が上がる? どういうことですか?

三井:たとえば、オリエンタルランド。東京ディズニーランド・シーを運営する会社です。オリエンタルランドの株式を500株以上持っていると年間で1枚、2,000株以上だと2枚、「株主専用」のパスポートチケットがもらえるんです。そうなると、「お父さん、すごい!」となるかもしれません(笑)

有野:それはいい(笑) ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)もチケットがもらえたりします? USJを紹介する番組のナビゲーターをさせてもらってるし、やっぱりゲーム好きとしては、子どもたちを「スーパー・ニンテンドー・ワールド」に連れて行きたいんですよねぇ。

三井:USJの運営会社は、そもそもいまは上場していないので、株主優待もないですね。

有野:上場してないと、そもそも株を買えないから、株主優待もないか。でも、テーマパークで株主優待の株を探すって言うのもいいなぁ。あ、JALで株主優待割引とかもあるか! うわ〜、考え方が広がりました。

三井:ほかにも優待限定のグッズやフィギュアなど、お金では価値が図りづらいものもありますし、本当にさまざまな種類があるんですよ。「どんな株主優待があるかな」「これをもらえたら嬉しいな」など、株主優待を選んでいる時はワクワクすると思いますよ。

有野:前に藤川先生の授業でも、ウルトラマンをモチーフにした「記念優待」のことを教えてくれたもんな。1,400社もあったら、優待品を調べるだけで、ひと月以上かかっちゃいそう(笑)

「もらって嬉しい」優待を選ぼう

有野:株主優待、いいじゃないですか。化粧品か、食べ物か、文房具もあるし。家族と一緒に選ぶのも楽しそうですね。

三井:おっしゃる通りです。ご家族のコミュニケーションツールとしても、株主優待は優秀だと思いますよ。

有野:なんとなく、優待狙いが自分に合ってる気がしてきました! 業績とか調べようとすると面倒になってしまうし、「株式投資で大儲け狙ったる!」っていうより、「優待ライフを楽しんでます」くらいのほうが生々しくないですし、何より有野サンが可愛くうつる(笑)

三井:そういう側面はあるかもしれませんね(笑) ただ、優待狙いの投資をするなら、いくつか押さえたいポイントや注意点があります。

有野:おぉ、それは知っておきたい!

三井:まず、より“お得”な優待を狙うなら、優待品をお金に換算した場合の「優待利回り」をチェックしましょう。株式の配当金と合わせた「配当 + 優待利回り」が10%を超える銘柄も珍しくありません。

有野:えぇ、めっちゃお得やん。それにします!

三井:ただし、先ほどのお米券やQUOカードのような、お金に換算しやすいものならいいのですが、「お得だから」という理由で買ったとしても、自分が全く使わないものばかりでは意味がありません。優待利回りも大事ですが、基本的には自分や家族が実際に食べたり使ったりする、「もらってうれしい優待」を選ぶべきでしょう。

有野:確かに。「お父さん、すごい!」のために、いろんなテーマパークの優待もらっても、期限があったり、行けなかったりするかもしれへんなぁ。余らすのはもったい無いし、かといってロケの合間に一人でテーマパーク行くのも寂しいし、意味ないし。帰って「行ってきたで!」って言うても、父の評価は下がります(笑)

三井:あと、会社によっては保有する株数ごとに内容が変わる優待もあるので、「何株保有すると何がもらえるのか」は調べておいたほうがいいですね。また、「〇年保有」のように、長期で株を保有すると、優待の内容がグレードアップする会社もあります。買う前に、優待の内容や条件は、きちんと調べておくべきですね。

有野:なるほど! 長めのご贔屓さん、常連さんであるほど優待が手厚いのは好きですよ。長期が好きやし、だからどんなモノがもらえるかだけやなくて、そういうお得なのがあるんやったら、調べるのは楽しいです。そこ目指して頑張れる。

三井:それに「優待利回り」が高いからといって、株価が暴落して大きな損をしてしまっては、いくら長期投資が前提とはいえ、投資の意味が薄れるので要注意です。できれば、購入する前に簡単に業績をチェックしたり、チャートで株価の値動きを見たりしたほうが、損失を気にすることなく、より快適な「優待ライフ」を送れると思います。

有野:うわ、「来年からご贔屓さん優待になるぞ!」って時に、優待が無くなる可能性もあるのか。テンション上がってたけど、確かに1,000円の優待品もらえたとしても、株自体で10万円損したらキツイですもんね……。株主優待で何くれるかは大事やけど、会社の業績はもっと大事や。

三井:もう一つ、株主優待をもらうには、「株主の権利が確定する日」の2営業日前(権利付き最終日)までに購入しておく必要があるんです。3月決算企業なら3月下旬、12月決算企業なら12月下旬。その年によって、権利確定日は微妙に違ってくるので、「2023年 権利付き最終日」などで検索して調べておきましょう。ちなみに今年の12月の権利付き最終日は、2023年12月27日(水)です。

有野:その日を過ぎるともらえないわけですか?

三井:基本的にはその「権利付き最終日」を過ぎてしまうと、翌年度にならないともらえません。なかには1年に2回、配当や優待を出す企業もあるので、その場合には「半年後の権利付き最終日」にその株を持っていればもらえます。

有野:なるほど。一筋縄にはいかないということか……。

三井:少し専門用語が出てきましたが、要は「その会社の決算月の中旬頃までに株を買っておけばもらえる」ということですね。株主優待の人気が高い会社だと、「優待をもらう権利だけゲットして、すぐに株を売る」投資家もいるので、決算日を過ぎると株価が下がることもあります。ただ、優待狙いは長期投資向きなので、それこそ一喜一憂せず、優待ライフを楽しみながら投資を続けてほしいですね。

有野:いい言葉やねぇ、「優待ライフ」。やっぱり、優待狙いが僕には合ってそうですね。後輩とかに「有野さん、優待ライフってどんな感じなんですか?」って聞かれるのも、“投資をやってる人”って感じがして気持ちよさそうやし(笑)

次回(10月24日配信予定)は「投資する前に見るべきポイント」について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

三井 智映子絵
「美しすぎる金融アナリスト」として話題となり、全国各地で個人投資家向けセミナーやIRセミナーに登壇。投資教育をライフワークとしている。 ZAI、SPA、マイナビ、FX攻略.com、DIME、ワッグルなどメディア掲載、連載の実績も多数。IRセミナーの構成作家やプロデュースも手がける。著書に『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門』(講談社)、『はじめての株価チャート1年生 上がる・下がるが面白いほどわかる本』 (アスカビジネス)がある。

ライター:新井奈央

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

© 株式会社マネーフォワード