谷村新司さんが本誌で語っていた『昴』制作秘話「引っ越しの時に寝転がって……」

10月16日に逝去が発表されたシンガー・ソングライターの谷村新司さん(享年74)。

数多くの国民的ヒットソングを歌ってきた谷村さんだが、’80年にソロ活動のなかで発表した『昴』の誕生秘話を本誌で語っていた。

本誌‘97年12月9日号に掲載された家田荘子連載「私にだけ聞かせて!」の記念すべき第200回に谷村さんが登場。音楽活動をデビュー前から振り返っていく中で、話題は『昴』へと移っていった。

当時、『アリス』が人気絶頂期で武道館1週間満員など記録を作っていたときに「虚しい。数字の争いでは心は満たされない」と感じ始めたという谷村さん。「アリスがピークになる前に、どうやって降りていくかを考えていた」という。

そして、『昴』を制作した時の話をこのように語った。

《アリスって、当時はわりとフォークロックみたいな感じでやっていましたから、全く違う色合いのものをハッキリ出していくという。それが『昴』だったんです。あのデモテープを作ったとき、声をそろえて言われたのは『どうしたの?』って(笑)》

《違う色を出していくときって、やっぱりすごく勇気がいるんです。同系を出していくほうがセーフティじゃないですか。ただ、それは自分はやりたくない。自分の中にある別の本質みたいなものを外に出したい、と》

《それまでいろいろインプットしていて、でも、出てきたのは突然。いつも突然なんですよ。あれは引っ越ししていたときに…。だから、周りに全部段ボール箱を積み上げてあったなかで、絨毯に寝ころがって書いたんです》

大ヒット誕生の裏には、谷村さんの“荒野に向かう勇気”があったのだ。

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