本気で挑む“外しワザ?” モーガン「プラスシックス」

イギリスの「モーガン」というスポーツカーメーカーをご存知だろうか? クルマ好きの人であれば、「フレームに木材を使用しているメーカーでしょ?」という答えが返ってくるかもしれない。1913年にイングランド中央部の風光明媚な街、マルヴァーンで創業したスポーツカー専業メーカーで、今日も古式ゆかしい工場で、職人たちによってハンドビルドされている。

モーガンが製造する自動車フレームが木で作られているというのは本当の話。馬車の流れを汲んでおり、木骨が用いられている。とはいえ実際は、車軸を保持するフレームは金属製であり、木骨はそのフレームの上に載せられ、ボディパネルを支える構造だ。

いかにもイギリスらしく伝統を重んじ、“走る化石”といわれることもあるモーガン。1936年に誕生した「4/4」というモデルが有名だ。だが現在は、驚くべきスピードで進化を遂げている。エンジンこそ時代とともに変わってきたが、基本的な車体構造を変えずに、2019年まで連綿と作り続けられていたのである。

2019年に登場した新型は、波を打ったような前後のフェンダーが特徴的なモーガンらしいスタイルだが、中身はモダンな作りになっている。ロータスやアストンマーティンと同じく、現代的なアルミ接着のモノコックシャシーを核に据え、その上に木骨を配し、アルミ製のボディパネルをかぶせている。今回試乗したモーガン「プラスシックス」が、まさにそれだ。

見た目はオープンボディにキャンバス地の幌を組み合わせたクラシカルなもの。だがそのボンネット下には340psを発揮するBMW製のB58型、3.0リッター、直列6気筒エンジンに8速ATが搭載されている。そう説明してもピンと来ない場合には、BMW 「Z4」やトヨタ「スープラ」に載っているものと同じパワーユニットといえば分かりやすいかもしれない。「スープラRZ」に比べると最高出力は若干控えめだが、車重が360kgも軽いので、コーナリングは重心の低いシャープな動きを見せる。クラシカルな見た目にだまされてはいけない。

モーガンとしてはかなりの進歩を遂げているが、それでもZ4あたりと比べると懐かしさが感じられるドライブフィールだ。風切り音は大きいし、足回りも硬めのセッティングになっており、乗り心地は決して良いとはいえない。けれどその猛々しい手応えをもって「モーガン=オトコのクルマ」として心酔するファンが多いのも事実なのである。もちろん最新モデルにはちゃんと効くエアコンが付いているし、スマートフォンとBluetooth接続できるスピーカーも装備されている。ゴルファーが乗るなら、早朝にソフトトップを開け放ち、助手席にキャディバッグを載せて、ゴルフ場まで「真剣にひとっ走り」という付き合い方がクールだと思う。

モーガンは名ばかりの「職人仕事」ではなく、丁寧に手作りされているので、注文してから納車まで時間がかかる。そのかわりに、一流のテーラーでスーツを仕立てるように、こと細かに仕様を選べる楽しみがある。オーナーの中には、マルヴァーンの工場まで自分の愛車が組み上げられている様子を見に行く人もいるくらいだ。

「記念すべき節目の年に、なにか特別な買い物をしたい」「一生モノを吟味したい」または「通り一辺倒のクルマにはもう飽きてしまった」という人にとって、モーガンは究極の選択肢となるだろう。

モーガン プラスシックス 車両本体価格: 1793万円(税込)

  • ボディサイズ | 全長 3890 X 全幅 1756 X 全高 1220 mm
  • ホイールベース | 2520 mm
  • 車両重量 | 1160 kg
  • エンジン | 直列6気筒 ターボ(BMW B58)
  • 排気量 | 3456 cc
  • 最高出力 | 340 ps(250 kW) / 5000 - 6500 rpm
  • 最大トルク | 500 N・m / 1600 - 4500 rpm
  • 変速機 | 8速AT(パドルシフト付)

Text : Takuo Yoshida

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