インフル流行か

 その昔、米国の子どもが神様に宛てた「かみさまへのてがみ」という楽しい書簡集が出された。日本語訳の本があり、〈あなたはどうして じぶんがかみさまだってわかったんですか?〉と、なかなか鋭い質問も並ぶ▲ある子どもは〈かぜをひくのは なんのやくにたつのですか?〉と尋ねている。体はぐったり、熱やせきも出る風邪をつくったわけを問いたくなったのだろう▲〈風邪を引くいのちありしと思ふかな〉後藤夜半(やはん)。忘れがちな健康のありがたさを知るためだよ、とでも神様は答えるだろうか。とはいえ、新型コロナというウイルス禍が命までも脅かし、社会全体を揺るがしたのを私たちは知っている。用心を重ねるに越したことはない▲インフルエンザは今年に入り、ずっと「はやり」の状態にある。とりわけ9月からは感染が急拡大し、この冬はコロナ禍の前よりも大規模になる恐れがあるという▲2020年から3年間、息を潜めていたが、皮肉なことにその間、インフルエンザに対する人の免疫力が低下したらしい。海外からの“持ち込み”も増えている▲例年よりも前倒しのワクチン接種が勧められている。マスク着用に手洗いと、あの生活習慣を思い起こす時らしい。〈なんのやくにたつのですか?〉。子どもでなくても問うてみたくなる。(徹)

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