「選挙が始まった時に結果は決まっている」?データから有権者の投票先決定時期について考える(データアナリスト 渡邊 秀成)

「選挙が始まったときには結果が決まっている」はウソ?ホント?

2023年10月の衆議院議員と参議院議員の補欠選挙の投票日が今週末に迫っています。選挙関係者にとって大切なのは選挙で当選することですが、当選するためには他の候補者よりも1票でも多く得票することが必要となります。そのために各選挙地域での有権者の投票動向に注目が集まります。

選挙での格言で「選挙運動開始時点で選挙結果は決まっている」というものがあります。これは選挙投票日を待つまでもなく、選挙結果は選挙運動開始時点では決まっているというものです。すなわち、日頃の政治活動、地域での活動を有権者は黙って観察しており、選挙期間に入る前に誰に投票するのかは決めているというのです。

言い換えれば選挙運動期間に入ってから力を入れて活動しても、あまり選挙結果には影響をしないというものです。これらについて各調査結果で確認できるかをみてみたいと思います。

50%以上が選挙期間序盤までに投票先を決めている

利用するデータは公益財団法人明るい選挙推進協会の意識調査結果からのものです。有権者がいつの段階で投票する候補者を決めたかについての調査結果についてグラフにしたものが下記になります。

衆・参院選時の有権者の投票先定時期(明るい選挙推進協会データより筆者作成)

この調査結果を見る限り「選挙期間に入る前から」「選挙期間に入った時」を合計すると、50%以上の人が投票先を決めていることがわかります。選挙期間に入った段階で半数以上の人が投票先を決めているとなると、選挙運動期間、投票日当日で投票先を決めている人は約半数以下となります。

これらの数値を観察すると、選挙で当選するためには日頃の活動がいかに大切であるかがわかります。

例えば選挙の得票数が1000票だったとすると、単純にこれらの投票決定時期に当てはめると、選挙期間に入った段階で500票以上、選挙期間中に何票と、どの段階でどの程度の得票数が得られたのであろうかと考える頭の体操になります。

実際には選挙期間に入る前から、選挙期間に入った段階で投票先を決めている人というのは、何らかの団体に所属する人、いわゆる組織票と呼ばれるもの、年齢層が高い人々である可能性が高いと思われます。組織票に関しては以前も触れておりますので、そちらをご覧ください。

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年代別に時期の差も。若者は直前、高齢者は事前に決める傾向

投票決定時期について年層別にみたものが下のグラフになります。

投票決定時期_年齢層別(明るい選挙推進協会データから筆者作成)

年齢層が高くなるにつれて、投票決定時期が早いことが観察できます。その一方、年齢層が若くなると投票日当日に投票先を決めていることがわかります。

以上は国政選挙での調査結果で観察したものでしたが、統一地方選挙での結果になるとさらに、有権者の投票先決定時期が早い人の割合が多いことがわかります。

統一地方選挙での有権者の投票先決定時期(明るい選挙推進協会データから筆者作成)

選挙の候補者が出揃った段階で6割の人が投票先を決定しています。国政選挙と異なり、地方選挙では有権者が候補者情報を知りやすい等の認識するための距離が近いことも関係しているのかもしれません。

各選挙の日程にこれら調査結果を当てはめていくと、おおよそいつの段階で、どの程度の人が投票先を決めているのか?そして年齢層別にみた場合どうなのか?ということについて検討することができると思います。

有権者は各政党、候補者のことについて、黙って、しっかり観察しているということが、これら調査結果からわかると思います。選挙を予定されている方は、ご自身の選挙日程にこれらの数値を当てはめてみて各種対策を立ててみてはいかがでしょうか?

今回は有権者が投票先をいつ決めるのかについて観察をしてきました。

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