コスプレイヤーえなこ “弟から400万円”だまし取られていた… 「家族間の詐欺」は罪に問える?

「年収1億」大人気コスプレイヤーのえなこ(公式サイト〈http://enako.info/〉より)

人気コスプレイヤーでタレントのえなこさんが、9月27日に放送されたABCテレビ『かまいたちの これ余談なんですけど…』に出演し、弟からお金をだまし取られていたことを明かした。

こうした“家族間”の詐欺や窃盗は罪に問えないというイメージがあるのではないだろうか。しかし、相続トラブルなど一般民事事件を多く対応する伊﨑竜也弁護士によれば、えなこさんのケースでは「罪に問える可能性もある」という。

まずは、えなこさんがどのように弟からお金をだまし取られてしまったのか、番組内の発言から整理する。

「心臓が悪くなっちゃって」

2年前、弟から「心臓が悪くなっちゃって入院費とかもろもろ含めて400万円必要だ」と言われたえなこさんは、弟が「親とあまり仲良くなかった」ことから、えなこさんを頼ったと考えたという。

そして弟の発言を信じたえなこさんは「400万円ポンッと振り込んだ」というが、最近になって弟は病院に行っておらず、振り込んだ400万円は「遊ぶお金に使った」ことが発覚した。

バラエティー番組の中であくまで“笑い話”として語られた話だが、SNS上では「えなこの弟の話えぐ」「ただの詐欺師」と“引き気味”の反応が多く見られた。

他人であれば、だましてお金を支払わせた時点で「詐欺」とみなされるが、親族間ではどうなのだろうか。

えなこさんの弟は刑罰の対象

刑法では、親族間の詐欺について刑罰を科さないことが定められており(刑法244条、251条「親族相盗例(そうとうれい)」)、被害者が親告しても罪に問われることはないが、えなこさんのケースでは、この「親族相盗例」が適用されず罪に問える可能性があると冒頭の伊﨑弁護士がいう。

「親族相盗例が適用されるのは、『配偶者、直系血族又は同居の親族』です。兄弟・姉妹は直系血族ではなく“傍系血族”ですので、えなこさんが弟と同居していないのであれば、通常どおり刑罰の対象となります」

ただし、罪に問えたとしても、「被害額を返金してもらえるとは限らない」と伊﨑弁護士は続ける。

「詐欺被害額などの返金には、詐欺を刑事事件化させ示談で返金してもらうという手段があるのですが、刑事事件において示談は必須ではありません。つまり相手方が示談を持ち掛けてこない限り、示談で返金してもらうことはできないのです」

お金を取り戻すには…

では詐欺によって奪われたお金を被害者が取り戻すにはどうすればいいのか。

伊﨑弁護士は裁判所に訴えが認められれば、詐欺を行った人に対して返金命令が下されるため、「民事裁判を検討すべき」と提言する。

とはいえ、証拠がなければ裁判には勝つことができないというのだ。

「一般的に、『400万円を支払ったこと』については、口座の履歴等から明らかな場合が多いですが、『だましたこと(=えなこさんのケースでいうと、病気でお金が必要という事実がないにもかかわらず、 病気でお金が必要であると誤信させ、お金を支払わせたこと)』を立証するのは、非常に困難です。電話や口頭のやり取りだけでは、“だます”発言をした記録が残らないためです」(伊﨑弁護士)

しかし実際に証拠がない場合であっても、「相手方の事後的な発言から『だましたこと』を推認できる場合がある」として、伊﨑弁護士は次のように解説する。

「あえてメールやLINE等で、『あの時は何で病気になったからお金が必要と嘘をついたの?』などと聞いてみて、その事実があった前提の返事があれば、十分証拠になると思います」

実は多い「家族間」の法律トラブル

司法統計によれば令和3年度には約2337件の「親族間の紛争」が家事調停事件として家庭裁判所に受理されている。

これはあくまで裁判所に持ち込まれた数で、親族間のトラブルはもっと多く起きていると考えられる。前出の伊﨑弁護士も「親族間の窃盗や詐欺については、私自身も何度か相談を受けたことがある」と話す。

「私が相談を受けたのは、直接的にお金をだまし取られたというものではありませんが、親族経営の株の売買に関して株の価格をかなり低めに言われて、それを鵜呑みにして安く売ってしまったり、判断能力が低下している高齢の親に対して、書面の内容をよく説明せずにサインさせ、実はその書面が自宅の売買に関するものだったという事例でした。こうした“親族間のトラブル”はよくある話だと思います」

その上で、姉・えなこさんの弟の“詐欺行為”についてこう語る。

「近年横行している『特殊詐欺』では、1件あたりの平均被害額は218万円です(令和4年度)。えなこさんがだまし取られた400万円という額は、さらにその倍近い金額ですので、かなり“悪質”なケースといえると思います」(同前)

ちなみにえなこさんは昨年12月にも、インターネット番組の中で千鳥・大悟さんに対して「6歳年下の弟からお金をたかられている」「2歳下の妹もお金をたかってくる」と相談していた。

えなこさんが稼いだお金を無心する弟妹たちが、“姉離れ”できる日はくるのだろうか…。

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