日立パワーソリューションズとセンシンロボティクス、ドローンの自動飛行機能を備えた風力発電設備のタワー点検システムを共同開発。従来より90%時間短縮できる

本システムは、風力発電設備のタワー外部の損傷や劣化箇所の点検を高度化するもので、点検時間を従来の1/10に短縮できるとともに、点検品質の向上によって設備の安全性向上を実現するという。

主な点検対象のタワー溶接部分

今回の共同開発では、日立パワーソリューションズが風力事業で培ってきた保守知見を産業用ドローンの活用実績が豊富なセンシンロボティクスのロボティクス技術と組み合わせたことで、ニーズが高まる風力発電設備のタワー点検の品質向上と効率化に対応したシステムの開発を5カ月という短期間で実現した。

日立パワーソリューションズとセンシンロボティクスは、今回開発したタワー点検システムを風力発電設備の新たな点検サービスとして12月1日から提供開始。また、2022年4月1日から提供しているブレードトータルサービスに用いられているシステムと組み合わせて点検機能の拡張と一括管理を可能にするシステム開発を推進し、さらなる高度化をめざすとしている。

https://www.drone.jp/news/2022020917524650446.html

背景

風力発電設備は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて導入拡大が加速している。一方で、2000年代にいち早く再生可能エネルギー事業に取り組んだ発電事業者が所有する風力発電設備については、耐久年数の目安である約20年が経過していることから、経年劣化による損傷が生じて事故につながる原因となるため、信頼性の高い点検が求められている。また、経済産業省は、2023年4月に風力発電設備のタワーの溶接部分の老朽化による倒壊の危険性について発電事業者に緊急点検の実施を要請した。

その一方で、風力発電設備のタワー点検は、定期点検や月例点検時に望遠鏡やカメラを使った地上からの点検が主体で、異常が確認された場合に、クレーンやロープアクセスで接近して専門技術者による詳細点検を実施するため、点検の精度向上と点検時間の短縮や作業軽減を実現する手法が求められている。

日立パワーソリューションズとセンシンロボティクスは、これまでにも風力発電事業者向けに、ドローンとAIを活用したブレードの点検システムを共同開発しており、設備の安全性向上・安定稼働を実現するサービスを、日立のLumadaソリューションの一つとして2022年4月1日から提供開始している。

タワー点検システムの特長

従来比1/10となる点検時間の短縮および作業負担の軽減を実現

点検システムに対象設備の情報や飛行ルート・撮影ポイントを設定することで、ドローンの自動飛行機能でタワー外部の損傷・劣化箇所の撮影が可能だ。従来、地上からの点検で異常が確認された場合に専門技術者がクレーンやロープアクセスで接近して約5時間を要して行っていた点検方法と比較して、点検時間を1/10に短縮。また、従来方法のような高所での点検を要しないため、作業負担の軽減と安全性を確保するという。

風力発電設備の製品仕様やサイト情報に応じた飛行ルートを自動生成

点検に必要な風力発電設備の製品仕様や対象設備の設置位置(緯度や経度)などのサイト情報をマスターデータとして登録することでドローンの飛行ルートを自動生成する。これにより、同一の設備で、常に同じ位置・範囲の撮影画像の取得が可能だ。

また、撮影画像には、サイト情報や飛行位置が記録されるため、同一条件での設備状態の過去データとの比較や傷の進展度合いの確認や適切な点検記録管理が可能になり、最適な保守計画の立案を支援する。

ドローンの飛行ルートイメージ

ドローンによる5方向からの高精度な撮影による高品質な点検

ドローンが自動で飛行して5方向からタワー外部を高精細に撮影することができるため、従来の望遠鏡やカメラを使って地上から確認する方法に比べて、ブレードによる死角を回避するなど、タワー全体の点検および損傷・劣化箇所の位置やサイズなどの詳細な確認が可能だ。

5方向から撮影した例

▶︎センシンロボティクス

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