日本の水素技術でダカールラリーに挑戦。国内6社で構成のHySEが水素エンジン車での参戦を発表

 10月18日、技術研究組合 水素小型モビリティ・エンジン研究組合(HySE)に加入している、カワサキ、スズキ、ホンダ、ヤマハ、トヨタの5社は、水素燃料エンジン車『HySE-X1』をダカールラリー2024に投入すると発表した。

 HySE(ハイドロゲン・スモールモビリティ&エンジン・テクノロジー)は、小型モビリティ向け水素エンジンの基礎研究を目的とした組織で、2023年5月に経済産業省の認可を得て設立された技術研究組合だ。10月1日現在、カワサキモータース、スズキ、本田技研工業、ヤマハ発動機の4メーカーが正組合員として参加し、川崎重工とトヨタ自動車が特別組合員となっている。

 そのHySEが、2024年1月5日(金)から19日(金)にかけて、サウジアラビアで開催されるW2RC世界ラリーレイド選手権開幕戦『ダカールラリー2024』のミッション1000カテゴリーに、水素燃料エンジン車『HySE-X1』で参加することとなった。

“ミッション1000”は、水素エンジンや電動およびバイオフューエルとのハイブリッドなど、カーボンニュートラルに向けた次世代パワートレインの技術開発を自動車メーカーに促す、『ダカール・フューチャー・プログラム』の一環として、来季2024年新たに導入されるもの。

 同組合がダカールラリーに投入するHySE-X1は、この枠組に合致する。総排気量998ccの直列4気筒スーパーチャージドエンジンで“世界一過酷”と言われるラリーを走行することで、小型モビリティにおける現状未知でかつ、容易に想像できない課題を早期に抽出し、水素エンジンの基盤技術構築を加速させたい考えだ。

 また、世界的に注目されるダカールラリーへの参加を通じ、HySEのプレゼンスや取り組みをアピールすることで、小型水素モビリティの実現に向けたグローバルで業界の垣根を超えた仲間づくりを図る狙いもあるという。

 HySEの理事長を務める小松賢二ヤマハ発動機執行役員/技術・研究本部長は、水素エンジン車でのダカールラリー挑戦の理由を次のように語った。

「このたび、歴史と伝統のあるダカールラリーに参加することとなりました。研究の成果を分かりやすい形で伝えたいという思いがあり、今回のラリー参加を決断しました」

「過酷な環境下での課題を洗い出し、技術を磨くことで、一日も早く水素エンジン小型モビリティ成立に必要な技術テーマを解決するべく、組合員一同力を合わせて頑張っていきますので、応援の程よろしくお願いいたします」

 クローズド・バギースタイルのHySE-X1は、HySEの協力会社であるベルギーのオーバードライブ・レーシング社の車体フレームをベースに作製。水素燃料タンクや燃料供給系統の設置のためのレイアウト変更を行った車体に、HySEが研究活動に用いているモーターサイクル用水素燃料エンジンが搭載されることになる。ラリー現地での出走にかかる給水素やメンテナンスなどの作業もオーバードライブの協力のもとで行われる予定だ。

 なお、このHySE-X1は10月25日~11月5日に東京ビッグサイトで開催される『ジャパンモビリティショー2023(JMS2023)』のモータースポーツプログラムブースにおいて、モックアップが展示されることになっている。

■HySE ダカールラリー2024参戦車両の概要

車両名:HySE-X1
寸法:3530mm×2070mm×1700mm
重量:約1500kg
エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク直列4気筒スーパーチャージドエンジン/DOHC4バルブ
総排気量:998cc

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