【どうする家康】最後の海老すくいが花道、徳川四天王・忠次

松本潤主演で、徳川家康の人生を描く大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。10月15日放送の第39回『太閤、くたばる』では、家康を長年支え続けた徳川四天王のひとり・酒井忠次が退場。渾身の「海老すくい」と、家康を天下人へと導く最後の奉公に、SNSでは号泣するコメントが相次いだ(以下、ネタバレあり)。

『どうする家康』第39回より、甲冑姿で息絶えた酒井忠次(大森南朋)(C)NHK

■ どうする家康、「天下をお取りなされ」

二度目の明国との戦の最中に倒れた豊臣秀吉(ムロツヨシ)は、遺言を作るにあたって側近・石田三成(中村七之助)に相談。今度の天下をどうするかを問われた三成は、以前から家康に語っていた「天下人は無用。豊臣家への忠義と知恵ある者たちが、話し合いをもって政を進める」という案を出し、秀吉はそれを承認。三成は家康に、天下を狙う大名を抑える役を願い出る。

『どうする家康』第39回より、「天下人は嫌われる」と躊躇する家康(松本潤)に「嫌われなされ」と力強く後押しする酒井忠次(大森南朋)(C)NHK

一方家康は、嫡男・秀忠(森崎ウィン)を連れて、京都で隠居暮らしをする酒井忠次(大森南朋)のもとを訪れていた。忠次はここまで生き延びてきた家康を褒めるとともに「天下をお取りなされ。戦が嫌いな殿だからこそできるのでござる」と、最後の願いを託す。忠次が陣触れの幻聴を聞いて、戦支度をしながら亡くなったのは、その3カ月後だった・・・。

■ 感慨深い「海老すくいパーティー」に涙

第37回の『さらば三河家臣団』では、その時点で隠居していたため「家臣団」のなかに含まれていなかった酒井忠次。このままフェイドアウトか? と思われたが、この39回で家康の意識を再び「天下取り」の方にシフトチェンジさせる、重要なキーマンとして再登場。確かに数々の武功を上げた名将であり、義理の叔父として公私ともに家康を支えてきた忠次をおいて、この大切な役割を担える家臣はいなかっただろう。

『どうする家康』第39回より、直政(右・板垣李光人)も巻き込み、忠次(大森南朋)と「海老すくい」を踊る秀忠(左・森崎ウィン)(C)NHK

家康と訪れたのちの徳川幕府2代将軍・秀忠(森崎ウィン)のリクエストに応えて、それまでの弱々しい姿から一転して、イキイキと海老すくいを踊った忠次。かつて「なんだこれは?」と目を白黒させた井伊直政(板垣李光人)や、織田信長の前で無理して踊ったきりだった家康も巻き込んだ『海老すくいパーティー』な絵面に、第1回からこの謎の宴会芸を見続けてきた視聴者たちから、次々に感慨の声が。

「海老すくいでシャキッとする忠次。泣ける。泣けるよ」「忠次最後の海老すくい(泣)殿と踊れて良かったね」「こんな半泣きで海老すくい見るとは、大河始まったころは思わなんだ」「ただの酒井忠次面白エピソードだと思っていた海老すくいで、ここまでしんみりさせられるとは」などの言葉が止まらなかった。

■ 最期に大仕事を務めた徳川四天王・忠次

さらに、「天下人は嫌われる」と躊躇する家康に対して「嫌われなされ」と力強く後押しする姿には、「徳川四天王としての最後の大仕事がこれだったのだなあ」「左衛門の『嫌われなされ』は『たとえ家康がほかの誰に嫌われようとわしらは殿が大好きじゃ。だから安心して嫌われなされ』だと思ってる」と、これも感動の声が次々にあふれた。

『どうする家康』第39回より、最期まで徳川家臣として生き抜いた忠次(大森南朋)に「ご苦労様でした」と頭を下げる妻・登与(猫背椿)(C)NHK

そして幻聴とはいえ、甲冑姿で家康のもとに駆けつけようとして亡くなった姿に「戦場ではないけど徳川家臣として死ぬことを選んだんだね」「左衛門尉は最期まで戦国武将だった」「美しい最期すぎる」などの追悼と並んで、演じた大森南朋にも「お疲れさまでした。素晴らしい忠次をありがとう」「あの明るさに沢山救われました。完全にロスです!」などの感謝の声が上がっていた。

関ヶ原の戦いの前に逝去してしまうからか「徳川四天王」のなかでは、あまりドラマで深く描かれた印象のない酒井忠次。しかし『どう家』では、大森がときおり漂わせる母性的な温かさを活かして、オカン的スタンスで家康を支えつつ、「海老すくい」で物語の緊張を解きほぐすという、忘れがたいキャラクターとなった。そして忠次を皮切りに、これからおなじみの家臣たちが次々と彼岸に渡っていくターンに入ることを、少し覚悟しておこう。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。10月22日放送の第40回『天下人家康』では、秀吉逝去後に家康がどんどんその存在感を増していくのと同時に、石田三成(中村七之助)と確執が生まれていく様子が描かれる。

文/吉永美和子

© 株式会社京阪神エルマガジン社