【連載コラム】第34回:MVP発表まで約1ヶ月 エンゼルス・大谷翔平は史上初となる2度目の満票MVPへ

写真:大谷翔平は2度目の満票MVPとなるか

MLBのポストシーズンはリーグ優勝決定シリーズに突入し、両リーグとも第2戦まで終了。ア・リーグはレンジャーズ、ナ・リーグはフィリーズが初戦から2連勝を収め、ワールドシリーズ進出まであと2勝に迫っています。このままレンジャーズとフィリーズがリーグ優勝を果たすのか、それともアストロズとダイヤモンドバックスが意地を見せるのか、明日以降の戦いにも注目です。

さて、ポストシーズンの戦いが終了すると、MLBはオフシーズンに突入。移籍マーケットがオープンするとともに、各アウォードの発表ラッシュが始まります。全米野球記者協会(BBWAA)の投票で決まる4つのアウォードは、11月中旬に受賞者が発表される予定です。具体的に挙げると、11月14日に新人王、15日に最優秀監督賞、16日にサイ・ヤング賞、17日にMVPが発表されます(すべて日本時間)。大谷翔平(エンゼルス)の2年ぶり2度目の受賞が確実視されるMVPの発表まで1カ月を切っているわけです。

BBWAAの投票は、たとえばア・リーグのMVPの場合、ア・リーグ15球団から担当記者が2人ずつ選ばれ、合計30人の記名投票によって行われます。BBWAAの公式サイトによると、その年に最も多く遠征した番記者には、少なくとも1つのアウォードへの投票権が与えられることになっているそうです。投票はポストシーズン開始前に提出されるため、ポストシーズンでの活躍ぶりは一切考慮の対象にはなりません。また、どの記者がどの選手に投票したかは、受賞者の発表と同時にすべて公開されます。もちろん、投票した記者は説明責任を負うことになります。

今季はMVPが大谷とロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)、サイ・ヤング賞がゲリット・コール(ヤンキース)とブレイク・スネル(パドレス)、新人王がガナー・ヘンダーソン(オリオールズ)とコービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)の受賞でほぼ確実。最優秀監督賞は、ア・リーグはブランドン・ハイド監督(オリオールズ)やブルース・ボウチー監督(レンジャーズ)、ナ・リーグはクレイグ・カウンセル監督(ブリュワーズ)やスキップ・シューマッカー監督(マーリンズ)が有力候補に挙げられています。

打者として打率.304、44本塁打、95打点、20盗塁、OPS1.066、投手として10勝5敗、防御率3.14、167奪三振という素晴らしい活躍を見せた大谷は、MVPを受賞できるかどうかではなく、満票受賞なるかどうかが注目されています。「ベースボール・リファレンス」が算出するWARは10.0を記録し、2位のムーキー・ベッツ(ドジャース)の8.4に大差をつけて両リーグダントツ。「ファングラフス」版のWARでも2位のアクーニャJr.の8.3を大きく上回る両リーグ1位となっており、そこに二刀流のインパクトを加味すると、2年ぶり2度目のMVP受賞は間違いないでしょう。大谷以外に1位票を入れる記者が現れることも考えにくく、私は2度目の満票受賞を予想しています。

満票MVPは、ア・リーグでは1935年のハンク・グリーンバーグから2021年の大谷まで11人、ナ・リーグでは1936年のカール・ハッベルから2015年のブライス・ハーパーまで8人、合計19人が達成しています。しかし、2度達成した選手は1人もいません。ケン・グリフィーJr.やマイク・トラウト、バリー・ボンズやアルバート・プホルスでも2度の満票MVPは達成できませんでした。前例のない道を歩み続ける大谷は、今回もMLBの歴史に新たな1ページを刻むことになりそうです。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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