しばらくスペイン代表の心配はしないでいい…/原ゆみこのマドリッド

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「まだ地獄の7連戦になるチームもあるんだ」そんな風に私が同情していたのは火曜日、コパ・デル・レイ1回戦の組み合わせを見ていた時のことでした。いやあ、9月と10月の各国代表戦の間、リーガとCLで3週間に7試合を消化したマドリッドの兄貴分チームたち、レアル・マドリーとアトレティコはそれぞれ昨季のコパ優勝、リーガ3位(2位がマドリーで繰上り)のおかげで1月14日から、サウジアラビアで開催されるスペイン・スーパーカップに出場。リーガ優勝のバルサとコパ準優勝のオサスナと共に今季のコパ2回戦まで免除されているのはわかっていたんですけどね。

一応、1回戦から参加する弟分たちの対戦相手をチェックしておこうと眺めてみれば、ええ、ヘタフェはタルディエンタ、ラージョはアトレティコ・デ・ルゴネスとどちらも地方リーグ(実質6部)のチームが相手。彼らにはヨーロッパの大会もないため、10月31日から11月2日のミッドウィークに行われる試合を心配する必要はさほどないかと思いますが、え?CL組のレアル・ソシエダ、セビージャ、そしてEL組のベティス、ビジャレアルにコパ1回戦があるってことは、彼らは再び、地獄の行軍を続けることになるってこと?

まあ、それはよそ様のことなので、あまり気にする必要はないんですが、先にスペイン代表の10月ユーロ予選2試合目がどうだったか、お伝えしていくことにすると。セビージャでスコットランドに2-0と勝利した後、チームは金曜にノルウェー戦の行われるオスロの地に移動。ウレボール・スタディオンでの一戦は中2日と間が短かったんですが、デ・ラ・フエンテ監督はスタメン変更を3人しかせず、カルトゥーハで太もも痛めたバルデ(バルサ)を継いで、後半から入ったフラン・ガルシア(マドリー)、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダ)に代わってファビアン・ルイス(PSG)、オジャルサバル(ソシエダ)に代わってアンス・ファティ(ブライトン)だけが新顔となることに。

真夏日だったセビージャの気温30℃から、一気に真冬の5℃となって、選手たちは動きやすかったはずですが、これがなかなかスコアが動かないんですよ。いえ、前半20分にはフェラン・トーレス(バルサ)がエリア内に入れたボールをストランドベルグ(バレレンガ)が自陣ゴールに向けてクリア。モラタ(アトレティコ)が最後に押し込んで入ったなんてことはあったんですけどね。よくある話でそのモラタがオフサイド疑惑が持ち上がり、VAR(ビデオ審判)モニターで主審がチェックした後、ノーゴールになってしまうんですから、ツイていない。それも実際、足を出さなくてもボールはゴール枠内へ行く軌道を辿っていたため、ロドリ(マンチェスター・シティ)など、「Para que la tocas?/パラ・ケ・ラ・トカス(何で蹴るんだ)」とモラタを叱責していたらしいですが、それはもう、体の奥底まで染みついたストライカーの習性ですからね。

ただ、後からデ・ラ・フエンテ監督が語ったことによると、「Nos han dicho que es fuera de juego de Ansu Fati/ノス・アン・ディッチョー・ケ・エス・フエラ・デ・フエゴ・デ・アンス・ファティ(あれはアンス・ファティのオフサイドだったと言われた)」そうで、ストランドベルグのボールを追いかけようと、GKネイランド(セビージャ)ともつれ合って倒れていたアンスも悪かったようですが、まあねえ。モラタ自身も後日、「フェイエノールト戦で決めたゴールと同じだよ(サウールがオフサイドだったが、関係性を認められず、スコアに挙がった)。Hablé con el árbitro y lo habría anulado aunque no la hubiera tocado/アブレ・コン・エル・アルビトロ・イ・ロ・アブリア・アヌラードー・アウンケ・ノー・ラ・ウビエラ・トカードー(審判と話したけど、ボクが触らなくても取り消したと言っていた)」と話していたため、要はそういうことだったんでしょう。

そしてラポール(アル・ナサル)とル・ノルマン(ソシエダ)のCBコンビがハーランド(マンチェスター・シティ)をがっちりマークし、CKなどの際は身長173cmのカルバハル(マドリー)やガビ(バルサ)が水面下でジャンプ前の相手を邪魔するなど、守備での綻びを見せなかったスペインは0-0のままでハーフタイム入り。後半頭から、デ・ラ・フエンテ監督はイエローカードをもらったル・ノルマンをダビド・ガルシア(オサスナ)に、せっかく先発のチャンスをもらいながら、ほとんど目立たなかったアンスをオジャルサバルに代えて、仕切り直しを図ったところ、早くも4分には効果が現れたんです!

そう、こちらも始めたのはフェラン・トーレスで、彼がエリア内右から撃ったシュートはゴール左前にいたモラタに当たってしまったんですが、そのボールを拾ったオジャルサバルが再びシュート。これも敵DF2人に当たり、最後に地面に落ちたボールをガビがゴールにしてくれたから、700人とそれ程、多くはないものの、応援に駆けつけたスペイン人ファンたちがどんなに喜んだことか。いえ、こちらもゴール前で大勢の選手が入り乱れていたため、VARモニターでのオフサイドチェックに5分程かかり、スコアに挙がるまで、ハラハラさせられたものでしたけどね。

この試合に勝つ以外、あと2節を残してのグループ敗退を免れる道がなかったノルウェーはリードされて後がなくなり、セルロース(ビジャレアル)とヌサ(クラブ・ブルージュ)を入れ、前線を強化したものの、そこはデ・ラ・フエンテ監督も抜かりありません。27分にはフェランを追加招集で代表デビューなったペドラサ(ビジャレアル)に代え、左サイドをダブルSBで補強。ええ、その日、ハーランドが初めて撃った38分のシュートもGKウナイ・シモン(アスレティック)が簡単にキャッチできるものでしたしね。それこそ、「守備的にウナイからモラタまでとてもコンパクトだった。No le hemos dejado recibir ningún balón cómodo/ノー・レ・エモス・デハードー・レシビル・ニングン・バロン・コモドー(彼にはゆとりのある状態でボールを1つも受けさせなかった)」とカルハバルも言っていた通り、完璧にロドリの同僚を抑えたスペインはそのまま0-1で勝っちゃいましたっけ。

いやあ、ユーロ出場にスコットランド戦で王手をかけてから、たった1試合で2位以上を確定してしまいましたからね。こうなれば、6月のネーションズリーグ・ファイナルフォーでも優勝したデ・ラ・フエンテ監督を疑う者はもう誰もいない?3位以下が決まり、最後の望みを3月のプレーオフに懸けることになった敵将ソルバッケン監督も、「ウチは長い時間、相手より劣っていたし、それを選手たちも知っていたと思う」と、スペインに完敗したことを認めていましたしね。この日は19才のガビが10代で5得点目という、代表最多記録を更新しての勝利となりましたが、このままモラタの好調期が11月まで続いてくれれば、キプロス、ジョージアにも連勝して、スペインはグループ首位で本大会グループ抽選のポッド1に入ることもできるんじゃないでしょうか。

そして五月雨のごとく、各国代表選手たちが帰還しつつあるマドリッドの各クラブの近況にも少し触れておくことにすると。アンチェロッティ監督もイタリアから戻り、月曜からバルデベバス(バラハス空港の近く)でのセッションが再開となったマドリーは火曜にはホセル、カルバハル、フラン・ガルシア、ケパのスペイン代表組と、せっかくクロアチア代表で今季はなかなかクラブでは機会が巡って来ない先発フル出場をしながら、トルコとウェールズに連敗し、ユーロ出場に黄信号が灯ってしまったモドリッチが合流。残りの出向組は火曜試合で、大西洋の向こうでW杯南米予選のウルグアイvsブラジル戦をプレーする、ビニシウス、ロドリゴ、バルベルデ、そしてユーロ2024の開催国であるドイツのアメリカツアーでメキシコとの親善試合があるリュディガーらの到着が木曜になるのは、再開リーガのセビージャ戦が土曜午後6時30分(日本時間翌午前1時30分)に設定されているため、ちょっと疲労が心配かも。

ただ、代表戦週間入り直前のオサスナ戦ではボランチのチュアメニで応急手当していたCBの頭数不足問題は解決しつつあって、ええ、この2週間のおかげで、アラバが完全に復活しましたからね。一緒にチーム練習に参加するようになったギュレルの方は、まだ18才と若いことと、9月もヒザの半月板の手術から回復した矢先に太ももを痛めるという前例もあったため、今週末にマドリーデビューとはならないかと。そうそう、月曜にはジローナ戦でポルトゥに猛タックルを見舞ってレッドカード、出場停止3試合を喰らっていたナチョの処分が上訴委員会の裁定で2試合に減刑。セビージャ戦はまだ出られませんが、その次のクラシコ(伝統の一戦、バルサ戦のこと)がOKになったのは朗報ですよね。

一方、同じく土曜の午後9時(日本時間翌午前4時)から、セルタ戦が控えているアトレティコも前回の代表戦明け試合、3-0でボロ負けしたバレンシア戦の過ちを決して繰り返すまいと月曜から、マハダオンダ(マドリッド近郊)で汗を流しているんですが、うーん、今回は7連戦ではなく、3連戦故の余裕でしょうかね。火曜には各国代表から最初に戻って来たモラタが練習後、自身の財団の主催でゴルフコンペを開催。小児ガン研究の資金を集めるという立派な目的はあったんですが、コケ、ジョレンテ、サウール、ビッツェル、アスピリクエタ、エルモーソとチームメートが何人も参加とは、paron(パロン/リーガの停止期間)のおかげで皆、体力が相当回復したということ?

それだけでなく、今週はチーム練習にコレア、バリオス、ソユンチュとケガのリハビリが終わった選手たちが続々と参加しており、近日中にはヒメネスも合流する予定。トップチームの選手14、15人で回していた7連戦中からは考えられない程、贅沢な状況に。更に言うと、ここリーガ2節はお隣さんがセビージャ、バルサとアウェイの難所が続くのに比べ、アトレティコはセルタ戦の後はホームでのアラベス戦。どちらも下位にいるチームなだけに、首位との勝ち点差5を縮めるまたとないチャンスなんじゃないかと思いますが、それも火曜試合組のグリーズマン(フランス、スコットランドと親善試合)、オブラク(スロベニア)、サビッチ(モンテネグロ)、そして南米組のデ・パウルとモリーナ(アルゼンチン)が負傷せずに戻って来られたらの話ですよね。

そしてやはり土曜試合でベティスをすでにチケット完売のコリセウムに迎えのるが弟分のヘタフェではすでにジェネ(トーゴ)、ロサーノ(ホンジュラス)が合流。とりわけ後者はキューバ戦でゴールを挙げてきたため、是非、クラブでの初得点も近日中に達成してもらいたいものですが、マキシモビッチ(セルビア)だけは火曜にモンテネグロに3-1と勝った後、水曜に戻って来ることに。相手のベティスも今はアキレス腱を断裂したバルトラの代わりのCBを探しているところですし、来週木曜にはELリマソル戦も控えているため、ボルダラス監督のチームが得意のホームゲームで勝ち点を稼いで、順位を一桁にするのも夢ではないかと。

その脇でマドリッド勢で1チームだけ日曜試合になったラージョはアウェイのラス・パルマス戦で、ここ4試合連続ドローという悪い流れからの脱却を目指すことに。それが、あまりニュースのないフランシスコ監督のチームと対照的に相手の方はピミエンタ監督の1年契約延長が発表されたり、ここ数試合、退団を匂わせていたジョナタン・ビエラがサウジアラビア行きを決意。ただ、あと1試合でラス・パルマスの1部100試合出場達成となるため、このヘタフェ戦だけは出るんじゃないかと言われているんですが、果たしてどうなることやら。何はともあれ、ラージョもEL出場圏の6位まであと勝ち点2とそこそこいい位置にいるため、早いところ、勝ち癖を取り戻してもらいたものです。


【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。

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