葉だけ残った木が何本も… クマ食害、リンゴ深刻 青森・西目屋村 捕獲数60頭、すでに例年の倍

クマにリンゴを食べられ葉っぱだけになった木。折れた枝が近くに散乱している=13日午後5時、西目屋村白沢

 青森県内各地でツキノワグマの出没が相次ぐ中、世界遺産・白神山地の玄関口、西目屋村で、農作物への被害が過去にないペースで多発している。特に狙われているのがリンゴで、収量に深刻な影響が出そうな農家もある。わなで捕獲した数も18日時点ですでに60頭を超え、例年の年間捕獲数の倍近くに上っている。

 「今年は散々。この木は全て食べられました」。13日、同村の農家西川友子さん(69)が指さす高さ3メートルほどの木は、赤いリンゴが一つもなっていなかった。同じような状態の木が園内に何本もある。

 木の下には枝が何本も散乱していた。クマが木に登った際に折ったとみられる。畑のあちこちにはクマのふんが落ちていた。

 今年は夏の猛暑の影響で落果も多く、出荷数が例年より減少しそうだという。「こんなことは今までにない。クマのために作っているのではないんだけど…」と西川さんは声を落とす。「木を折られたので、来年の生産にも影響が出そう」

 村によると、食害対策で設置したわなによるクマの捕獲件数は例年数件、多くて30件程度だった。クマの出没件数を左右するとされるブナの実が今年は少なく、山で食べる物が見つからないクマが里に下りているとみられる。豊作だった昨年にクマの栄養状態が良くなり、子グマがたくさん生まれて餌が足りなくなっているという見方もある。

 食害の報告があるたびに村は、クマを捕まえるわなを被害園地周辺に設置する。今年は村所有の14基のわなを全て設置してもさらに被害が連日のように発生し、わなが足りていない状況だという。村の鳥獣害対策巡視員を務める佐藤修治さん(68)も「狩猟に関わって40年になるが、こんなにクマが出た年はない」と驚きを隠さない。

 昨年から村の鳥獣害対策を担う地域おこし協力隊員の山形祐介さん(35)によると、穴を掘って畑を囲む電気柵をかいくぐったり、住家のすぐ隣の畑を襲ったりするケースが村内で出ており、「リスクを冒してでも里に食べ物を探しに来ている。対策をしていても防ぎきれていない」と話す。

 捕獲されたクマは食用になる。村の食肉加工施設で処理され、村特産の「クマカレー」などとして販売されている。現在、連日のクマの捕獲で保存用の冷凍庫がいっぱいになり、試験的に道の駅津軽白神で冷凍肉にして販売している。

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