【電子処方箋】医療現場の活用事例を相次ぎHPに掲載/医療DXの価値やメリット共有へ

【2023.10.19配信】厚生労働省医薬局総務課電子処方箋サービス推進室は、電子処方箋の活用事例を相次いでホームページに掲載している。これまでは「医療機関等向け総合ポータルサイト」で導入事例紹介を掲載してきたが、厚労省内HPにも「電子処方箋の活用事例」ページを追加。最近では10月13日に公立岩瀬病院(福島県)の事例を紹介。より多くの患者の目に留めてもらうためには、自施設の患者動線を意識して周知広報物を配置すると効果的であることなどを紹介している。

<事例>公立岩瀬病院(福島県)/患者さんの動線・視線を考慮した位置に周知広報物を配置し利用促進

これまで掲載された事例は4つで、電子処方箋サービス推進室では今後も事例を随時追加したい考え。
掲載事例は以下の通り。

■公立岩瀬病院(福島県)
POINT: 患者さんの動線・視線を考慮した位置に周知広報物を配置
より多くの患者さんの目に留めてもらうためには、自施設の患者動線を意識して周知広報物を配置すると効果的。

公立岩瀬病院では、案内文書を院内のどこに置くと一番減るのかを調査。結果、公立岩瀬病院では外来が全て2階にあるため、エレベータ前に置いた案内文書の減りが一番早いことが判明したという。
この結果を踏まえ、電子処方箋の利用を促すチラシをエレベータ前に設置。その他の周知広報物も患者の動線・視線を考慮して設置し、認知度・利用率の向上を図っている。他の周知広報物でも、患者の動線・視線を考慮し、電子処方箋の利用を促しているという。具体的には正面玄関から再来受付機までの途中にポスターを掲示したり、総合案内で電子処方箋の説明動画を再生、また各科外来の掲示板にポスターを掲示するなど。

<事例>ナカジマ薬局(北海道)/特定健診情報を踏まえて投薬量を調整

■ナカジマ薬局(北海道)
POINT: 特定健診情報を踏まえて投薬量の調整を行った事例
マイナンバーカードを活用した過去情報閲覧を通して、データに基づいて医師と薬剤師が患者にとって最適な薬物治療について検討することができた。

ナカジマ薬局(北海道)の60歳代の患者の事例。薬剤減量として介入した。経緯としては、お薬手帳で関節リウマチ関係の処方を受けていることを確認。現在の処方内容から、腎機能障害や慢性腎不全の可能性が推察された。そこで、患者がマイナンバーカードを持参して同意を得たため、過去の特定健診情報を確認し、尿蛋白やeGFR(推算糸球体濾過量)を確認。その結果を踏まえ、更に患者に最近の検査値の有無や、最近の体調の聞き取りを実施。レボセチリジン塩酸塩は腎排泄型薬剤であり、腎機能が低下している患者は投与量を調整する必要があることから、得られた情報を元に処方医に疑義照会を行った。当初、別の薬剤に変更することも検討したものの、処方医との議論を通し、最終的にはレボセチリジン塩酸塩錠を減量して調剤することとなった。

<事例>山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院/HPKIカードを用いない「カードレス署名」実践

■山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院
POINT: HPKIカードが無くても電子署名が可能に
電子署名を行う際に、HPKIカードを用いない「カードレス署名」が広まっている

電子処方箋の発行時、又は、電子処方箋を調剤済みにする際には、電子署名を行う必要がある。従来の物理的なカードを用いる方法に加え、HPKI2nd鍵を用いて物理的なカードを用いず行う方法である「カードレス署名」が広まっている。医療DXを積極的に推進する、地方独立行政法人 山形県・酒田市病院機構 日本海総合病院においては、2023年7月より、カードレス署名を行っている。日本海総合病院においては、カードレス署名の早期導入の他、より多くの患者に処方箋を使ってもらうために、電子処方箋のデジタルサイネージによる周知活動や各窓口へのカードリーダー設置といった工夫を行っている。窓口職員の積極的な声掛けにより、不安なくマイナ受付や電子処方箋の利用ができたといった声があるとのこと。副院長・内野英明氏も、「カードレス署名導入後、問題なく毎日使うことができています。」とコメントを寄せている。
システムベンダも相次ぎ対応しているという。

なお、カードレス署名を希望する施設はシステムベンダとの調整が必要となる。

<事例>日本調剤/電子版お薬手帳とマイナポータル連携

■日本調剤(東京都)
POINT: 処方・調剤情報をタイムリーに閲覧可能
電子版お薬手帳でも、マイナポータルと連携して電子処方箋の処方・調剤情報を表示できるように

対応する電子版お薬手帳アプリにて、マイナポータルを通して閲覧できる電子処方箋の処方・調剤情報をアプリ上に表示することができるようになっている。対応する医療機関・薬局からデータが登録※されればすぐに閲覧することができる(※医療機関・薬局が電子処方箋に対応していれば、紙の処方箋が発行された際/紙の処方箋に基づいて調剤が行われた際にも、データは登録され、マイナポータルや対応するアプリから閲覧できるようになる)。
また、電子的に登録された処方・調剤情報と、電子版お薬手帳の薬の検索機能、服薬アラーム機能や、副作用情報の記録機能などを組み合わせることで、より良い薬物治療につながる。
実際に日本調剤では、アプリの連携機能によって処方情報が、従来の紙の処方箋に似たレイアウトで確認できるようになっている。マイナポータル側からAPI連携で引換番号を自動的に取得し、薬局に送れることも利点だ。
「いつでも直近のデータが見られるから医療機関で相談しやすい!」「お薬手帳の機能の組み合わせることでより良い医療に繋がる!」といった利点は患者にも理解されやすいポイントになるだろう。

上記のような好事例は、自薬局で患者に電子処方箋・電子版お薬手帳のメリットを説明する際に補足情報として活用することもできる。

医療DXの価値やメリット共有へ好事例公表

厚労省ではこれまでもオンライン資格確認や電子処方箋を筆頭にした医療DXについては、より質の高い安全な医療につながることのほか、ヒューマンエラーの削減などを通じて、事務の効率化、簡素化にもつながるものとして人手不足が深刻化する中で、医療・介護の人材確保にもプラスになり得る改革として精力的に取り組んでいる。一方、推進には医療従事者や患者など関係者が医療DXの価値やメリットを共有することが欠かせないとして好事例の公表などを手掛けている。

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