訪日誘客に最大5000万円 事業主対象 観光発展へ 茨城県が補助

茨城県庁=水戸市笠原町

インバウンド(訪日客)需要の取り込みを強化するため、茨城県は観光事業者への新たな経済支援に乗り出した。地域のハード面整備に最大で5000万円、ソフト面の開発に最大で2000万円をそれぞれ補助する。今後拡大が見込まれる訪日客のニーズに応えることで、地域での観光消費額を高め、茨城県観光を発展させる狙い。

ハード面の対象は、観光協会や観光地域づくり法人(DMO)、商工会、民間企業など。事業は、ホテル街などの街並み整備や古民家改修、デジタルトランスフォーメーション(DX)化といった観光地の一体的なエリア整備を想定している。

ソフト面の対象は、日本のアニメや歴史、文化といった訪日客のニーズに沿った取り組みを支援する。例えば、車内にバーが設けられたバスで酒蔵巡りや常陸牛などを味わうグルメツアー、江戸時代の装いなどを楽しみながら歴史に触れる体験イベントなど。

県は公募で寄せられた事業案について、有識者の意見を踏まえて選定。事業主には、訪日客の動向に詳しいコーディネーターが継続してアドバイスし、ニーズに応えられる企画に仕上げる。ソフト事業とともに、県が交流サイト(SNS)やメディアなどを通じ、海外に売り込む。

県は9月、今回の補助事業者として計13団体を認定した。ハード面は、つくば観光コンベンション協会など5団体。ソフト面では、自然を楽しむために整備した長距離歩道「常陸国ロングトレイル」の活用を提案したアウトドア用品店など8団体を選んだ。

県の予算額は全体で5億4千万円。今後、事業の磨き上げや補助金の交付額を決める。

県内観光入り込み客数は2022年が約4960万人で、コロナ禍前の19年から2割減。一方、観光消費額は約2950億円で、1970年の調査開始以降で過去最高だった。ただ、外国人の宿泊客数は今年1~7月は、延べ9万5760人で、2019年同期の約8割にとどまる。

県は労働人口減少に伴う人材不足や物価高により、観光業界は依然厳しい状況にあると指摘。国内観光客に比べ、将来的に需要拡大が見込めるとして、訪日客向けの観光地づくりや観光企画の必要性を強調する。

県観光物産課の担当者は「各事業を海外にプロモーション展開し、県内への訪日客を拡大させたい」と意欲を示す。

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