【MLB】 予想外の”下剋上”中のDバックス 選手たちは10月の予定の変更に追われる

写真:予想外の躍進中のダイヤモンドバックス

第6シードでプレーオフにギリギリで滑り込んだダイヤモンドバックスは、予想外の快進撃を続けている。ワイルドカードシリーズでは、敵地で中地区優勝のブリュワーズを撃破。さらに地区シリーズでも、西地区優勝のドジャースをスウィープで退けて、今はリーグチャンピオンシップシリーズをフィリーズと戦っている。

2年前は100敗以上、昨年も88敗を喫したDバックスは、レギュラーシーズン・プレーオフ共に下馬評は高くなかった。プレーオフでは2つの地区王者を退け、確かな実力を示しているとはいえ、ここまでの快進撃を予想できた人はいなかっただろう。

そして、それは何もファンや解説者だけではなく、選手やスタッフ、球団にとっても同じことだった。今、Dバックスの関係者たちは10月のスケジュールのキャンセルに追われている。予想外の躍進が引き起こした悲喜こもごもを『ESPN』が取材している。

まず、Dバックスはプレーオフを戦うための会場を確保しなければならなかった。本拠地チェイス・フィールドでは、地区シリーズが行われる間、本来ならロックバンド”ガンズ・アンド・ローゼス”のライブが予定されていた。

しかし、ワイルドカードシリーズを勝ち抜いてしまったため、ライブの日程を変更してもらうことになった。さらに今週土曜日(現地)にもチェイス・フィールドでイベントが予定されているが、リーグチャンピオンシップシリーズがそれまでに終わらなければ、そのスケジュールも変更を余儀なくされるだろう。

プレーオフでここまで3本塁打と活躍中のガブリエル・モレノは、レギュラーシーズンの終了に合わせて妻と出産を予定していた。しかし、予想外のプレーオフでの躍進により、モレノは1ヶ月近く家を空けなければいけなくなってしまった。モレノ夫妻は離れているには長すぎると、リーグチャンピオンシップシリーズからは赤ん坊と母も遠征に帯同することに決めた。

ブルペンで大車輪の活躍を見せているライアン・トンプソンは、10月にはシーズンが終わっていると思っていた。そのため、彼は通っている神学校の追加のコースを取ってしまった。トンプソンは受講を決めた2ヶ月前には、まだレイズのAAAでプレーしていた。不振に喘いでいた右腕だったが、8月19日にDバックスと契約すると13登板で防御率0.69と大変貌。そこからチームのプレーオフ進出とプレーオフでの躍進に貢献しているが、トンプソンは受講を決めてしまったことを「後悔している」と語っている。

キャリアの浅い選手だけではなく、百戦錬磨のベテラン、エバン・ロンゴリアでも、この躍進は想定外だったようだ。「妻が月末に子どもたちとクルーズを予約したんだ。払い戻しはできない。予約しておいてキャンセルする方が良いと思ったんだ。妻はプレーオフの分配金で相殺しようと考えているよ」とロンゴリアは笑う。

他にも結婚式、家族の卒業パーティー、予定していた手術など、多くの選手や球団スタッフがリスケジュールに追われる中、1人だけこれを予期していた人物がいる。

それがこのシンデレラチームを作り上げたマイク・ヘイゼンGMだ。ヘイゼンは昨年の10月は子どもたちとモンタナに釣り旅行を計画したものの、「今年はその機会はない」と予定を空けていた。オールスター後には9連敗を喫し、苦しい時期もあったが「希望を持っていた」と、チームの躍進を信じていた。

一方、そのDバックスと戦うフィリーズの選手は、プレーオフ経験豊富なスター選手が多い。

2019年のワールドチャンピオンで6回目のプレーオフとなるトレイ・ターナーは「勝ち取らなければいけないとき、同時にそれを期待しなければいけない。ここ(プレーオフ)に来たいなら、自分たちに自信を持たなければいけない。そうだね、僕は長いこと10月の計画を立ててこなかったし、これからもそうだと願うよ」と貫禄あるコメントを残している。

ナ・リーグチャンピオンシリーズのここまでは、フィリーズのスター選手がその貫禄を見せつけるかのように2連勝している。今シリーズではまだ調子の鈍いDバックスだが、ここから盛り返してさらなるリスケジュールに追われることが叶うだろうか。

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