2023年10月改正「ふるさと納税」何が変わった? 本当に改悪? 変更点を検証!

ふるさと納税のポータルサイトをはじめ、様々なサイトで、2023年10月よりふるさと納税制度が改悪?されるので9月末までに利用することをすすめるコラムが数多く掲載されており、ふるさと納税を利用されたことがある人ならこれらのコラムを目にしたことがあると思います。

今回は、あらためてふるさと納税制度の基本についておさらいし、本当に改悪されたのかどうか考えてみたいと思います。

そもそも「ふるさと納税」ってどんな制度?

ふるさと納税制度については、総務省のHPやふるさと納税のポータルサイトを見ればわかりやすくまとまっているのでここでは詳細は割愛しますが、筆者が一番大切だと思っているポイントだけお伝えします。

ふるさと納税とは、自分の生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域や、これから応援したい地域に「寄付」をすることができる制度です。

寄付とは、募金活動を実施している組織に金銭を贈ることを指します。

私たちはお金を使うときに、意識さえすれば、消費にしても投資にしても自分の「思い」をお金に込めることはできますが、筆者は、より直接的にお金に自分の「思い」を込めることができるのは、「寄付」だと考えています。

あまり良い例えではありませんが、多くの寄付団体は事業収入などの自主財源だけで組織を運営するのは難しく、その寄付団体の活動に賛同した個人や企業などからの寄付に頼ってしまっているという状況から考えると、その寄付が途絶えてしまうと組織自体の運営が滞る事態を招く恐れがあるからです。

つまり、寄付する人の思い一つで組織の存亡まで左右されかねないからこそ、誰もが気軽に寄付できる仕組みはあった方が良いとは思いますが、気軽な気持ちで寄付することには疑問が残ります。

これをふるさと納税に当てはめてみると、寄付金が集まらなかった自治体は、実行できる施策が限られ、寄付金がたくさん集まった自治体は実行できる施策が増えるのは致し方ないとしても、その年その年で寄付額が増えたり減ったりと大きく変動してしまうとどうでしょうか。

ふるさと納税の返礼品の人気に左右されるということは、予算の見通しが立てにくく、何か施設を建てるといった一時的な施策に取り組めたとしても、継続的に子育て世代に対して支援を続けるといった政策を安定的に行うことは難しくなるでしょう。

ふるさと納税は選挙以上の効果?

とはいえ、ふるさと納税の仕組みを理解したうえで利用する人が増えることには大賛成です。ふるさと納税は、自分が応援したいと思える自治体へ、しかも地域活性化、復興支援、教育・子育て支援などと具体的に使い道までを指定して寄付することが可能です。

選挙では、候補者の公約が実現されることを期待して投票しますが、当選後に必ず公約が果たされるとは限らないことを考えると、ふるさと納税はある意味、自分の意思を直接自治体の政治に反映させることができる有効な手段とも言えるでしょう。

自治体にとっても返礼品をきっかけとして、まず自治体の存在を認知してもらい、その自治体に魅力を感じてもらうことができれば、継続的に地元の特産品を購入してもらったり、観光客の誘致につながったり、さらに移住につながるのであれば、税収の増加が期待できます。

税収が増えるということは、その自治体に住んでいる住民の公的サービスがさらに充実することにつながるわけですから。

このようにふるさと納税は、本来、ふるさと納税利用者にとっても自治体にとってもwin-winの関係が築ける素晴らしい仕組みなのです。

2023年10月からの改正は改悪なの? 変更点を検証

総務省が発表した「ふるさと納税の次期指定に向けた見直し」によれば、2023年10月より、ふるさと納税は以下の点が改訂されました。

これらの改訂は、「改悪」というより、ふるさと納税制度の本来の趣旨(地域貢献等)にそった運用を実現するための変更と言えるでしょう。

1:「5割ルール」の変更

5割ルールとは「寄付にかかる経費の総額を、寄付額の5割以下にする」ことを定めたルールです。 しかし、実際にはこのルールに不明確な部分があり、5割超の自治体が存在する可能性もあることから、自治体間で寄付割合の格差が生まれないように費用のルールが明確にされました。

2:地場産基準の変更

原材料が他の都道府県産でも、主要部分の加工・製造を自治体内で実施することで、原則的に「地場産品」として認めていたのですが、今回の改訂では、精米と熟成肉について、主要部分の加工・製造のみならず「原材料も同じ都道府県産であること」が求められるようになりました。

また、他地域産の品と地元産の品のセット商品で他地域産の品が多いものは返礼品の対象から除外されるようになりました。

5割ルールが変更されたことで、新基準で経費率が5割を超えていた自治体が、返礼品の金額を減らすことで新基準のルールを守るようになることから、制度が改悪されたと言われることもあるようです。

しかし一時的にはやむを得ないかもしれませんが、地元の生産者にしわ寄せがいかないように、制度を運営する各事務費用や広告宣伝費用や配送費用などはさらなる事務の効率化やAIなどの技術の活用によって、費用を抑えつつ、返礼品の魅力を高めていくように自治体も工夫と努力を積み重ねていくことを期待したいと思います。

このように本来趣旨に沿った運用になるように変更されたものであり、本来の趣旨を損なうようなルール変更があったわけではないことはご理解いただいたうえで、今一度ふるさと納税の理念を確認し、自分の大切なお金の使い道の一つとしてふるさと納税を活用してみてはいかがでしょうか?

【執筆者プロフィール】計倉 宗州(とくら そうしゅう)

キッズ・マネー・ステーション認定講師/DCプランナー/ファイナンシャルプランナー
子供達にはお金を稼ぐことを人生の目的とするのではなく、稼いだお金で自分らしいお金との付き合い方をみつけ、自立して堂々と生きていく“おとな”になってもらいたいと考え、都内及びつくば市を中心に自分らしさを見つけるワークショップや個別相談を行っています。

(ハピママ*/ キッズ・マネー・ステーション)

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