「忘れられた存在」から出荷量5倍超へ 粘りがあってしっとり甘い食感が魅力“幻のサトイモ”

「開成弥一芋研究会」の辻会長。復活させる前は「地元でも忘れられた存在だった」と振り返る

 かつては激減して“幻のサトイモ”といわれた神奈川県開成町の「開成弥一芋」が本格販売されてから10年がたった。地元生産者の熱意に大手スーパーのイオンなどが協力して生産拡大や販売促進などに取り組み、2017年度には「かながわブランド」に登録され、出荷量は販売開始時の5倍以上となるなど地元の名産品に成長した。

 開成弥一芋は、1903年に同町金井島出身の高井弥一郎が小田原の寺から譲り受けた種芋をルーツに広めた。粘りがあってしっとりと甘い食感が魅力で、戦前までは関東全域で栽培されていたが、戦後は水稲作に押されて栽培は衰退していった。後に復活させた「開成弥一芋研究会」の辻理孝会長(56)も「私たちの世代は食べたことがなかった。地元でも忘れられた存在だった」と振り返る。

 地元の特産品をつくろうと、2011年に開成の農家有志が同研究会をつくって普及に努め、町やJAなどと13年には「開成弥一芋ブランド化推進協議会」を設立。イオンも地域の伝統的な食文化を応援する「フードアルチザン活動」の一環として同協議会に参加し、秦野店と町内2カ所のマックスバリュで販売を開始した。

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