大樋陶冶斎氏が死去 95歳 陶芸家、文化勲章

作陶の抱負を語る在りし日の大樋陶冶斎氏=2016年10月、北國新聞社

  ●金沢、現代感覚の美追究

 文化勲章受章者で日本芸術院会員の陶芸家、大樋陶冶斎(おおひ・とうやさい=本名・奈良年郎)氏が17日午前11時24分、脳出血のため、金沢市の石川県立中央病院で死去したことが19日、分かった。95歳。自宅は同市橋場町2の17。通夜、密葬は近親者で行い、喪主は長男の陶芸家、十一代大樋長左衛門(ちょうざえもん)氏が務めた。大樋氏の死去により、県内在住の文化勲章受章者、芸術院会員はいなくなった。

 大樋氏は1927(昭和2)年、九代大樋長左衛門氏の長男として金沢市に生まれた。県立工業学校を経て、49年に東京美術学校(現東京芸大)工芸科を卒業。代々受け継ぐ大樋焼の伝統を守りながら、現代感覚あふれる「今様(いまよう)の美」の新しい陶芸を開拓した。

 日展、日本現代工芸美術展などを舞台に活躍し、50年に日展で初入選、82年に文部大臣賞(現文科大臣賞)、85年には日本芸術院賞を射止めた。87年に十代大樋長左衛門を襲名し、99年、日本芸術院会員。2004年に文化功労者、11年に文化勲章。16年、「長左衛門」の名を長男に譲り、陶冶斎を名乗った。

 日展顧問を務める大樋氏は11月3日に開幕する第10回日展に向けて制作中で、完成した作品の搬入を今月23日に控えていた。遺作として出品されるという。

 一般財団法人県美術文化協会理事長を長く務め、現在は筆頭副会長。日展・工芸美術の有力団体である現代工芸美術家協会長。金沢学院大副学長も務めた。67年には北國文化賞を受けた。

© 株式会社北國新聞社