シリア北西部で戦闘が再び激化──病院にも攻撃、人道状況はさらに厳しく

シリア北西部で10月3日から、各勢力の敵対行為が激化している。この地域に住む人びとにとって大きな打撃となり、医療施設にも壊滅的な影響を与えている。少なくとも7万8千人が家を失い避難したと報告されているが、現在も続く敵対行為により、支援は妨げられている。

イドリブの避難民キャンプで活動するMSFのスタッフ=2023年5月22日撮影 © MSF

医療施設を攻撃するな

現地の保健当局によると、少なくとも46人が死亡し、女性や子どもを含む279人が負傷した。MSFが支援する施設では、女性2人を含む60人の負傷者が治療を受け、5人が死亡した。

医療施設もシリア政府軍の砲撃を免れなかった。イドリブにある3つの病院、大学病院、国立病院、アル・モハファタ病院が攻撃を受け、業務を部分的に停止した。

「このような攻撃は容認できません。弱い立場に置かれているシリア北西部の人びとや、ぜい弱な医療システムに悲惨な結果をもたらすものであり、最も強い言葉で非難します」と、MSFのシリア北西部での現地活動責任者シハム・ハジャジは語る。

「すべての紛争当事者は、国際人道法を尊重し、人びとと民間インフラを保護し、医療施設を守るべきです」

医療へのアクセスがさらに困難に

さらに、イドリブとアレッポ西部にある19の病院は、必要不可欠でない業務を中止して救急医療に特化しているため、医療へのアクセスがさらに困難になっている。現地の保健当局は、医療従事者を効率的に活用し、イドリブの基幹病院や前線に近い病院に専門医を派遣するよう求めている。

「最前線にある病院や医療施設と連絡を取り合っており、患者を直接受け入れる準備は万全だと伝えています」と、イドリブのMSF医療活動マネジャー、アボ・マフムード・アル・ホムシ(安全上の理由で仮名)は言う。

MSFが活動していたアル・サナア避難民キャンプも砲撃された。キャンプにいた女性と子どもたちは、より安全な地域に避難した。だが、飲料水、トイレ、食料、避難施設などが不足しているため、状況は極めて厳しい。過密状態が状況をさらに悪化させている。

MSFはこの地域の複数の避難民受け入れセンターに医薬品と物資を届けた。アタリブの血液バンクに輸血用バッグを寄贈。医薬品や手術キット、その他の物資をイドリブの5つの病院と2つの医療拠点に提供し、アトメ慈善病院にも物流支援を拡大した。

10年余の内戦で傷ついた医療網と人道状況がさらに悪化

「イドリブでの外傷と外科手術の能力を向上させるため、緊急に行動を起こす必要があります。これは、戦闘で負傷した人びとに治療を提供するだけでなく、人口密集地での不発弾の増加による長期的な影響に対処するためにも、重要です」。MSFのシリア北西部での現地活動責任者シハム・ハジャジは、こう語る。

この新たな暴力の連鎖は、10年以上にわたる内戦がもたらしたシリア北西部のただでさえ悲惨な人道状況を、さらに悪化させるだけである。 MSFは、被害を受けた地域社会の医療的・人道的ニーズの把握に全力を尽くしている。

私たちは、命を救う医療を必要としている人びとに届けることに、引き続き全力を尽くす。

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