被害と加害 多角的視点で 長崎原爆資料館リニューアル巡り 運営審小委が論点まとめる

20人余りの傍聴者(手前)が見守る中、リニューアルに向けた意見を交わした小委員会のメンバーら=長崎市、長崎原爆資料館

 長崎市が2025年度に予定する長崎原爆資料館(平野町)のリニューアルを巡り、核情勢や歴史などの専門家でつくる同館運営審議会小委員会は19日、全4回の会合で出た課題や方向性を取りまとめた。論点の一つ「原爆投下に至る歴史」について、戦争における原爆の「被害」と日本のアジア侵略など「加害」の両面を、多角的な視点で考えることができる展示を目指すと確認した。
 審議会委員(20人)のうち専門的知見を持つ7人が、7月から五つの論点について議論。市はこれらを踏まえてリニューアルの基本計画素案を策定し、11月以降に審議会に示す。
 19日の4回目会合で、事務局の市は「核兵器を巡る国際情勢」について▽核兵器廃絶への道筋を考える機会を与える▽廃絶に努力・貢献した人々をクローズアップする、「被爆医療や放射線」については▽デジタル技術を活用して視覚的に示す▽被爆者の健康被害や不安が生涯続くことをストーリー性を持って伝える-などの方向性を整理した。委員の追加意見として、展示物などの「ハード」面だけでなく、館内を案内する人の育成やデジタルツールの活用など「ソフト面」の議論も深める必要があるとの声もあった。
 展示レイアウトについては、市が現在の常設展示室に入る前に「被爆前の長崎の暮らし」を紹介する案や、被爆医師の故永井隆氏のコーナーを外して市永井隆記念館(上野町)に集約する案などを示した。

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