旧日本軍が使ったトーチカの解体始まる 自衛隊基地整備中の馬毛島 西之表市長は「悲しい」

トビウオ漁の見張り台として使われたトーチカ(2022年8月、小型無人機で撮影)

 鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地整備で、太平洋戦争中に旧日本軍が使ったとされるトーチカ(防御陣地)の解体が進んでいる。戦後、トビウオ漁の見張り台に活用されたトーチカは、国策で造られ、国策によって消えることになる。

 秋晴れが広がった19日、上空からトーチカが立つ岳之腰(標高71メートル)の造成も始まっている様子がうかがえた。防衛省によると、解体は18日に本格化、20日ごろ終わる見通し。市は職員の立ち会いが認められず、記録保存を求めている。

 トーチカはコンクリート製で、高さ3.8メートル、直径3.6メートルの円筒形。1941(昭和16)年12月~42年2月にかけ、地元から建設作業員を手配した記録の写しが市立図書館に残る。

 岳之腰の造成で種子島から望む島影が変わることもあり、八板俊輔市長は「そこにあるべきものがなくなるのは悲しい」と話している。

造成が始まっている岳之腰(中央)。頂上付近が解体中のトーチカ=19日、西之表市馬毛島
夕日でシルエットが浮かび上がった馬毛島の岳之腰。奥の島影は三島村・硫黄島=19日、西之表市

© 株式会社南日本新聞社