東京二期会 2024/2025シーズン ラインアップ発表会レポ

都内で東京二期会の2024/2025シーズンのラインアップ発表会が行われた。
2020年から始まったコロナ禍、今年2023年にようやく落ち着き、外国人観光客の姿も頻繁に見受けられるようになった。
この日は『ドン・カルロ』東京公演初日。発表会には大勢の取材陣が集まった。

まずは理事長の挨拶、今年は「東京とオペラ」と題して気軽にオペラに触れてもらえるように無料のものを含めて16のイベントを実施、上野を訪れる海外旅行者の方々にも足を向けてもらえるように、ということで「この東京が、アジアにおけるオペラ文化の発信地として認知されることを目指している」と挨拶。また、「単に質が良く、芸術性の高い公演を上演していればいい時代は過ぎ去りました」と。さらに「次のシーズンは4公演のうち全てが新制作」とアナウンス。70年の歴史を誇る二期会でも初めての試み、また2つは女性演出家によるもの、そのうちの一つは女性指揮者になる。「新たな挑戦になるとともに、これまで築いてきた海外歌劇場との厚い信頼関係のもとに、新しい時代の潮流に呼応する舞台を皆様にご提供してまいる所存です」と挨拶。

それから、2024/2025シーズンの公演についての詳細が山口毅事務局長より説明があった。
シーズンテーマは「名作を新しいフェーズに」、各演目には、作品にあった指揮者とオーケストラ、またこれまで共演経験のあるオーケストラを起用、より高みを目指して作品づくりに取り組む。「社会における二期会の存在」「世界と同じ潮流の中で新しいものを創る」と意欲的。
さらに東京二期会では若い人を対象にした取り組みに力を入れる。学生席は各公演、前売2000円で販売。

2024年9月はシャンゼリゼ劇場、カーン劇場、パシフィック・オペラ・ヴィクトリアとの共同制作で、モーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』、指揮はクリスティアン・アルミンク、演出はロラン・ペリー、演奏は新フィルハーモニー交響楽団。公演は9月5日から8日まで新国立劇場オペラハウスにて。

クリスティアン・アルミンクは24歳でチェコのヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団を初めて指揮し、すぐに首席指揮者として迎えられている。2003~2013年に新日本フィル、2011~2019年にベルギー王立リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督として活躍した。2017年から広島交響楽団の首席客演指揮者を務め、2024年からは同団の音楽監督に就任予定。新日本フィル時代には『レオノーレ』『フィレンツェの悲劇』など、オペラ・プログラムにも積極的に取り組んだ。また、2019年には小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトで小澤征爾と共に『カルメン』全4公演を指揮。
ロラン・ペリーは、衣装やセットのデザインも手がけ、コミカルで風刺的ながら詩情に溢れ想像力豊かな作風の演出家。2021年には二期会で『ファルスタッフ』を演出、衣装も手がけている。また、2022年にはバロック・オペラの傑作『ジュリオ・チェーザレ』、2011年にパリ・オペラ座で初演され話題となった。舞台はエジプトの博物館の倉庫。巨大な彫像や絵画などが登場するユーモアのセンスに溢れた作品であった。

<ジュリオ・チェーザレ』公演レポ記事>

2024年10月はボン劇場との共同制作、R・シュトラウス『影のない女』、指揮はアレホ・ペレス、演出はペーター・コンヴィチュニー、演奏は東京交響楽団 2024年10月24日から27日まで東京文化会館 大ホールにて。
アレホ・ペレスはアルゼンチン出身、ザルツブルク音楽祭などで活躍。今年11月には日生劇場と東京二期会との共催公演となる『午後の曳航』に登場する。
ペーター・コンヴィチュニーは1945年フランクフルト・アム・マイン生まれ。著名な指揮者フランツ・コンヴィチュニー(1901~62)を父に持つ。手がける作品全てが世界に大きな話題を提供、テキストの入念な読み込みに止まらず、体得したスコアの音楽から「生きた劇場」芸術を社会の中に創出する。また皇后役で冨平安希子が抜擢、「大きな挑戦です」と前向き。また、オール日本人キャストになるそう。演出のペーター・コンヴィチュニーからコンセプトも少し聞いているそうで「驚くような演出になると思う」と期待。また、皇后役については「内面の変化が顕著にみられる役で入念に準備を進めたい」と語った。

2025年2月にはビゼー『カルメン』。指揮は沖澤のどか、演出にイリーナ・ブルック。2025年2月20日から24日まで。演奏は読売日本交響楽団。
沖澤のどかは青森県三沢市出身。2018年、第18回東京国際音楽コンクール〈指揮〉にて、女性として初めて第1位及び特別賞、齋藤秀雄賞を受賞。第1回ニース・コートダズール・オペラ指揮コンクールセミファイナリスト。2020年よりベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のカラヤン・アカデミーの奨学金を受け、キリル・ペトレンコの助手となり、2023年4月より京都市交響楽団の第14代常任指揮者に就任。今年10月には東京交響楽団に初登場。
イリーナ・ブルック、彼女の父は20世紀を代表する演出家・ピーター・ブルック(1922-2022)、日本でもセゾン劇場にて『カルメンの悲劇』(1987)『マハーバーラタ』(1988)、『桜の園』(1989)などが上演されている。イリーナ・ブルックはパリにてピーターブルックと女優のナターシャパリーとの間に生まれた。フランコブリティッシュの演出家兼プロデューサー。彼女は2002年にフランス文化省から芸術文化勲章に選ばれ、2017年5月芸術文化勲章オフィシエにアップグレードされ、レジオンドヌール勲章を授与。その手腕に期待。

2025年7月にはウィーン・フォルクスオーパー、ウィーン国立バレエ団との共同制作チャイコフスキー『イオランタ/くるみ割り人形』。
指揮はマキシム・パスカル、演出:ロッテ・デ・ベア、演奏は東京フィルハーモニー交響楽団、2025年7月18日から21日まで。
パスカルは1985年、フランス南部カルカソンヌ生まれ。2008年には気鋭の作曲家やピアニスト、サウンド・エンジニアと「ル・バルコン」という芸術家集団を立ち上げた。
演出のロッテ・デ・ベアはつい先ごろ、『ドン・カルロ』の演出で、その手腕を見せてくれた。1981年生まれ。アムステルダム芸術大学で演出を学ぶ。演出デビュー作『ペンテジレア』で一躍脚光を浴びる。演出家ペーター・コンヴィチュニーとともにライプツィヒ歌劇場で演出に従事。欧州の主要歌劇場で数多くの演出を手掛け、高い評価を受けている。
『イオランタ/くるみ割り人形』のベースはチャイコフスキーのオペラ『イオランタ』。主人公は目が不自由なプロヴァンス王国の王女イオランタ、自分が盲目であることを知らない。父親の王は、この事実に娘が正面から向き合わないよう全力を尽くし、婚約者であるブルゴーニュ公爵ロベールにも必死で隠す。それでもイオランタは、自分の人生に何か欠けているものがあることを心の底で感じている。
『イオランタ』と『くるみ割り人形』が組み合わさっている理由、1892年にサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で一緒に初演、だが、今回はそこからさらに踏み込んだ演出となる。バレエ『くるみ割り人形』のおとぎ話は、王女イオランタが心の目で感じる色鮮やかでエキサイティングな物語として表現。『イオランタ』は王女の精神的成長を描いており、『くるみ割り人形』は児童期から思春期への少女の成長、子どもから大人の世界へ、自立、成長への移行を象徴。世代を超えて楽しめる作品。

<『ドン・カルロ』公演レポ記事>

公式サイト:http://www.nikikai.net/index1.html

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