「雪虫の正体は?」「雪虫が飛ぶと初雪が降る?」北海道民も知らない雪虫の謎

北海道の長い冬を迎える前、秋によく見かけるのが「雪虫」。北海道では「雪虫が飛ぶと初雪が降る」と言われていますが、そもそも「雪虫」は正式な名前ではありません。一体その正体は何なのでしょうか?また、本当に「雪虫が飛ぶと初雪が降る」のか、調べてみました。

雪虫の正体は「トドノネオオワタムシ」

雪虫と呼ばれているのは「トドノネオオワタムシ」というアブラムシの一種。成虫になると蝋状の白い綿毛をまとってフワフワと飛ぶことから、「雪のような虫」として「雪虫」と呼ばれるようになりました。

春にヤチダモという木で生まれ、夏から秋のはじまりにトドマツに住み着きます。トドマツで樹液を吸いながら1年の間に何度か世代交代をし、秋の終わりに羽の生えた成虫がヤチダモに移動します。つまり、私たちが見ている雪虫の様子とは、トドノネオオワタムシの成虫がトドマツからヤチダモに移動している途中を見ているものでした。

弱い昆虫ならではの変わった生存戦略

トドノネオオワタムシは「弱い昆虫」として知られ、外敵に対抗する術を持たず、どんどん捕食されてしまいます。しかし、それに対抗する大きな特徴が「幹母」と呼ばれる形態を持つこと。

脱皮を繰り返していくうちに「幹母」と呼ばれるメスとなり、そのメスが自分と同じ遺伝子のクローンのメスの幼虫を生み、その幼虫もクローンを生むことで増殖。1匹のメスがおよそ150匹の幼虫を生むので、捕食されながらもそれ以上に産み続けることで、これまで生存してきたという訳です。

「雪虫が飛ぶと初雪が降る」は本当?

北海道では「雪虫が飛ぶと初雪が降る」と言われていますが、一体本当なのでしょうか。北海道でトドノネオオワタムシの成虫がヤチダモの木に移動するのは、およそ10月頃。一方札幌管区気象台によると、北海道に初雪が降る時期の平均は、札幌が11月1日、北海道で一番早い稚内や旭川が10月19日。

つまり時期的に「トドノオネオオワタムシが飛びはじめ、その後に初雪が降る」ということが、ピッタリ当てはまります。

基本的に飛ぶ力が弱く、ゆらゆらと揺れて飛んでいることから「雪のよう」に見え、「雪虫」と呼ばれるようになったトドノオネオオワタムシ。

その姿は、長い北海道の冬のはじまりを感じさせてくれます。

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