岩手県でクマに襲われ70代女性が死亡…自然保護課が語った捕獲・殺処分の「現状」

※こちらはイメージです

全国各地で相次いで報告されるクマの出没。10月19日にも岩手県で70代の夫婦が襲われたと一斉に報じられ、世間を震撼させている。

報道によれば、通報があったのは同日午後2時ごろ。夫婦が岩手県八幡平市の山林できのこ採りをしていたところ、先に妻(75)がクマに襲われ、助けようとした夫(79)も襲われたとのこと。夫は頭や手首などに重傷を負い、通りがかった別の男性に救助され病院に搬送。警察などの捜索で同日午後5時過ぎに、山林内から妻の遺体が発見されたという。

岩手県におけるツキノワグマの人身被害は、現在までで38人と過去最多を更新している。

「岩手県では’21年度の人身被害は14人、昨年度は24人と年々増えつつあります。最も出没が多いのは北上市で、今回被害のあった八幡平市と一関市がその次に多いようです。八幡平市では今年に入って、これで8件目の人身被害となります」(全国紙記者)

いっぽう隣の秋田県では、クマを駆除したことで苦情が殺到したという“二次被害”も波紋を呼んだ。

「今月4日に美郷町で野生のツキノワグマ3頭が作業小屋に立てこもり、地元の猟友会によって駆除されました。このことがニュースで報じられると、秋田県庁や美郷町役場に『クマがかわいそう』『なぜ殺すんだ』とクレームの電話が殺到。職員たちの業務に支障をきたすほどだったといいます」(前出・全国紙記者)

■今年度の殺処分は250頭も苦情の電話はほぼナシ

今回クマによる人身被害が大々的に報じられた岩手県だが、捕獲や駆除の状況はどうだろうか?そこで本誌は20日、岩手県庁環境生活部の自然保護課に話を聞いた(以下、カッコ内は全て担当者)。

まず担当者によれば、「基本的には県内で許可を出して、市町村の方で捕獲を実施することになります。クマは保護もしなければいけないという面もありますので、被害があった場合、その個体に対して捕獲の許可を出すという形です」とのこと。

なお今年度は、8月末時点において捕獲したクマは263頭だという。その上で、「クマを保護する視点もあるため、捕獲上限数を毎年決めております。今年度は上限を686頭と決めています」と教えてくれた。

いっぽう、捕獲されたクマは全ての個体が殺処分されるというわけではないようだ。

「クマが危害を加えたわけではなく、ただ迷い込んできた場合などは、街中で捕獲した後に印を付けて山に放すこともあります。ですが、印を付けた個体が街中に戻ってきたならば、“戻ってくる癖がついてしまった”ということで殺処分することになります。ただ、ケースとしてはあまり多くはありません」

なお今年度に殺処分したクマは「おそらく263頭のうち250頭くらい」だといい、「捕獲した後に山に放したケースは、1%ほど」とのことだった。

ではクマを駆除することに対して、苦情が寄せられることはあるだろうか?

「稀にございます。街中に出没したクマが殺処分されたとニュースなどで報じられた際に、『殺す必要はなかったのではないか』というお叱りのお電話を受けることは確かにあります」

ただ件数は多くはなく、「今年で5~6件ほどだったと思います」とのこと。続けて担当者は、「秋田県が大変なようですけども、岩手県ではクマを殺処分したとニュースになったケースが今年度はあまり多くなかったので、そこまで影響が出なかったように思います」と語った。

たとえ殺処分のニュースを目にしたとしても、県や自治体のやむを得ない判断だと理解すべきだろう。

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