日本時間20日に行われたナ・リーグチャンピオンシップシリーズ第3戦は、ダイヤモンドバックスが2対1でサヨナラ勝ちして、シリーズを1勝2敗とした。
これまでフィリーズに投打で圧倒されていたDバックスがシリーズ初勝利を挙げられた要因が、先発投手ブランドン・ファートの好投だった。
Dバックスは1・2番手のザック・ギャレンとメリル・ケリーこそ安定感抜群のデュオだが、3番手以降はかなり不安視されていた。3番手を務めるファートは有望株として期待される存在だったが、今年は防御率5.72というホロ苦デビュー。しかし、ワイルドカードシリーズ初戦に抜擢されてからは好投が続いている。
地区シリーズの第3戦では、強力ドジャース打線を相手に4.2回を無四球無失点に抑えた。長いイニングこそ任せられていないが、ファートは打者2巡を抑えてブルペンに繋ぐ存在として、Dバックスに大きな貢献をもたらしていた。
そして迎えた今日の第3戦、負ければ王手をかけられるという状況で、ファートは再び好投する。許した安打は2本、奪った三振はキャリアハイの9個、そして四球と失点はゼロ。連続で無四球・無失点の先発登板を成し遂げたのは、MLBのプレーオフではこのファートが史上初という正真正銘の快投だった。
しかし、その歴史的快投の最中、Dバックスのトーリ・ロブロ監督は非情な決断を下した。好投していたファートをわずか70球、5.2回で降板させたのだ。
本拠地アリゾナのファンはファートを交代させたロブロ監督にブーイングした。
しかし、Dバックスが2対1で接戦をモノにした今、この非情な判断は正解だったように見える。
まず、ファートは40~50球という球数の目安が設けられていた。ロブロ監督は昨日の記者会見でファートの球数制限について質問され、これまで通りの制限を設けるとし「打者18人、プラスマイナス4人」との対戦にすると目安を示していた。(『ASAP Sports』)
今日の先発ではファートはきっかり18人と対戦し、3回目の1番カイル・シュワーバーとの対戦を前にしてマウンドを降りた。
さらに、俗に「3巡目理論」と言われることもある、対戦回数が増えるほど投手は分が悪くなるというセオリーは、今回もファート交代の判断を強く裏付けるものとなっている。
『MLB.com』によれば、ファートは1巡目の被OPSが.703、2巡目が.859、3巡目が1.193。対戦回数が増えるほどに打ち込まれていることがよく分かる。
そして、対戦していたはずのシュワーバーは2巡目のOPSが.645なのに対して、3巡目が.996。3巡目になると成績が悪化するファートが対戦するにはあまりに危険な存在だった。
そして、シーズン47本塁打を放ち、プレーオフでも流れを変える一発を放っているシュワーバーに対して、ファートも被本塁打が多いタイプなのも懸念だった。100イニング以上投げた投手の中では、ファートより被本塁打率が悪い投手は6人しかいない。
ロブロ監督はブーイングを受けながらの交代について、5.2回9三振の投手を代えたら愚かだろうか?と自問していたという。しかし、批判を恐れない交代の判断が、ブーイングを勝利への歓声へと変えた。