近藤麻理恵 成田悠輔に「ばっさり消去しようと今決意しました」と言わせた“デジタルデータ”片づけの魔法とは

経済学者・成田悠輔が初の番組MCを務める『夜明け前のPLAYERS』は、“未来の日本を作る変革者=PLAYERS”と成田の対談番組だ。ゆるゆるとした雑談にみせて、予測不能な展開でPLAYERSの素顔に迫る。第9夜の“PLAYERS”は、片づけコンサルタントの近藤麻理恵。片づけノイローゼ(自身で命名)で失神した10代の出来事から世界の”こんまり”へと羽ばたいたプロフィールを、成田が独自の目線で分解する。意外にも成田と近藤の共通項は「絵本」だった。

■「ときめく」は細胞レベルの感度の高い反応を取り出す

成田が気になったのは、近藤が提唱する“こんまりメソッド”のキーワード「ときめく」だ。
「“ときめく”という言葉が最初に思い浮かんだ瞬間や、最初に使い始めた瞬間って覚えていますか」という問いに近藤は「明確にあるんです」と話し出した。

それは20代の会社員女性に、洋服の片づけレッスンを行っている時だった。それまで「ときめく」という言葉は、”こんまりメソッド“の中には存在していなかった。片づけにとって大切な”残す“選択のために「これを持っていて幸せですか? 好きですか?」との問いかけで、判断を促していたのだとか。

しかし件(くだん)の女性にこの問いかけは通用しなかった。「好きな気もするし……」と進みが遅い。困った近藤はいろいろな聞き方を試す中で、ふと「それって持っていて、ときめきますか?」と口にした。すると「いや、ときめかないです」とすぐに反応が返ってきた。この瞬間「この言葉だ」と近藤は確信したのだそうだ。

「“ときめく”って頭だけでなく身体感覚が伴う問いかけなんですよ」と近藤。心や細胞がキュンと上がる感じがあるため、幸せや好きという言葉より体が動くのだと分析する。成田も納得したようだ。何度もうなずき「(“ときめく”は)目の前の人から細胞レベルの感度の高い反応を取り出すための質問からスタートしたんですね」ときれいにまとめた。

■世界進出のカギは、絵本翻訳家による「ときめく」翻訳

さらに近藤は、アメリカで“こんまりメソッド”が広く伝わった要因の一つも「ときめく」という言葉だったと続ける。

近藤が”世界のこんまり”となったのには、著書『人生がときめく片づけの魔法』(2010年出版)の翻訳本の功績が大きい。英訳は、絵本を多く翻訳している平野キャシーだ。「ときめく」という言葉を直訳ではなく、日本語の感覚に合った表現にするためにいくつもの単語の組み合わせを考え「Spark Joy」という言葉を生み出した。「“Spark Joy”という言葉によって英語圏の人にうまく伝わったんですよね」と近藤。

「絵本の翻訳って、誰にでも伝わるような言葉への変換というところで一番繊細な気がしますよね」と成田も深くうなず頷きながら呼応した。実は成田も最近、絵本の翻訳をしたのだとか。原題『When Things Aren’t Going Right, Go Left』を、『挫折しそうなときは、左折しよう』(文:マーク・コラジョバンニ、絵:ピーター・レイノルズ)とした。直訳すると「物事がうまくいっていない時は、方向転換しよう」となるが、“Go Right”は「うまくいく」の他に「右に行く」という意味もある。そこで、成田いわく「挫折と左折をかけた親父ギャグみたい」なタイトルにしたのだ。

「それ、素晴らしい訳です」と感心する近藤が「絵本(の言葉)って、口に出して面白いかもけっこう関わってくる」と語ると、「言葉が単純で、さらに長さとか見た目のバランスとかも大事じゃないですか。すごくクリエイティブな作業だなと」と成田も意気投合。「絵本で培ったセンスが、“こんまりメソッド”の世界進出に関わっていたと」と思案深げだった。

■「人生の片づけを考える人ほど、片づけをするしかないんです」

もう一つ、成田が気になるのは人生の片づけだと言う。人生100年時代になると暇や退屈が大きな問題の一つになると考えているのだとか。多くの人が孤独になってかつ時間がある状態になるから、人生の後半の充実感のために時間の逆片づけができるのかと問うた。

近藤は「人生の片づけを考える人ほど、片づけをするしかないんです」と断言。写真の片づけは老後の楽しみにとっているという人を例に、その気持ちがあるなら今やることがおススメだと話す。「やってもらった方が一人残らず、“今やって良かった”とおっしゃるんです」と言う理由は、「残りの人生がすべて、自分が選んでときめくものになった思い出を味わえる時間になる」からなのだとか。

「やってみます」と笑いながら成田はさらに、デジタルデータの片づけについて近藤に迫った。デジタル化された写真の片づけを直接指導することはないと言う近藤だが、物理的な写真の片づけをした人からは、往々にしてデジタルの片づけをしたいと言われると話す。「そういう時は、2、3時間かけていっきに片づけるということをやっていただいています。好きなものはハートマークをつけて他はダーッと消去していく。すごく果てしないです」

その大変さを思い出しつつ「やらなくてもいいかもしれない」と控えめな発言の近藤に対して成田は、「デジタル空間に漂う黒歴史みたいなのがすごい」と自身のデータへの感覚を語り、「人類の平和のために一定時間ごとに全消去されるっていう制度とか」とまで口にしたのだが、「自分の分は自分で片づけるのがのぞましいですね」と諭す近藤に「ばっさり消去しようと今決意しました」と宣言。「(人の話を)聞くと、自分は捨てようかなと決断できますよね」とほくそ笑む近藤だった。

第9夜の様子ほか『夜明け前のPLAYERS』の全話は、公式YouTubeでディレクターズカット版が、公式HPでノーカット版が配信されている。

「夜明け前のPLAYERS」
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