〈世界ジオ認定・変わりゆく手取川〉イトヨ姿消す 環境DNA解析、河川整備影響か

手取川左岸で水をくみ取る一恩教授(右)と澤常務(左)=白山市美川湊町

  ●他の魚類も解析へ

 北國新聞社の手取川環境総合調査団による新事業「環境DNA解析」で、手取川の魚類を調べたところ、かつて生息が確認できたイトヨのDNAが検出されなかったことが20日分かった。イトヨは海で育ち、春に川を上って産卵する淡水魚で、絶滅が危惧されている。調査団は手取川の整備や自然環境の変化などさまざまな要因により、イトヨが遡上(そじょう)できなくなった可能性もあるとみて他の魚類の生態についても調べる。

 河川や湖沼の水の中には魚の排泄(はいせつ)物や死骸などから出たDNAが漂っている。環境DNA解析は、川の水を1リットルほど採取し、DNAを増殖させることで生息の有無や生物の種類などを推定する仕組みで、従来の生物調査のような多大な労力、時間、費用はかからないのが特長だ。

 調査団魚類グループの一恩英二県立大教授と環境公害研究センター(金沢市)の澤康雄常務は今年5月、手取川の魚類の生態を調べるため、4カ所の水を採取して分析した。澤常務は1996年に手取川でイトヨの生息を確認しているが、今回の解析ではイトヨのDNAは確認できなかった。捕獲調査でも個体は見つからなかった。

 イトヨはトミヨとともに巣づくりの淡水魚として知られており、かつては手取川から小さな水路に入り込み、産卵する様子が見られていた。一恩教授は「水路のゲート設置や河川整備が影響しているのかもしれない」と語り、イトヨのDNAが検出されなかったこととの関連性について引き続き調査する。

 調査団は他の魚類に関する環境DNA解析も行っており、手取川に恒久的に生息している魚と姿を消した魚についての分析も進める。

 ★イトヨ トゲウオ科の淡水魚で体長10センチほど。産卵のため川を上り、2月下旬ごろから小川や水田に移る。動物プランクトンや甲殻類などを捕食し、産卵期は春から夏とされる。

繁殖したイトヨの稚魚=魚津水族館

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