ハンドル持たず自動運転 富山市婦中で実証実験開始 23日から客乗せ運行

藤井市長を乗せて出発する自動運転車両=富山市朝日公民館

  ●県内市町村で初

 富山市は20日、地域公共交通の維持や運転手不足の解消に向け、婦中地域朝日地区で自動運転の実証実験を開始した。ハンドルやアクセル、ブレーキの操作をシステムが担い、運転手が乗車する「レベル2」の技術を活用し、23日から地元住民らを乗せて運行する。市によると、県内では2017年に国土交通省が南砺市で自動運転の実証実験を行っているが、市町村による実施は初めて。

 実証実験ではタクシータイプの車両を使う。乗客の定員は2人で、朝日公民館を発着点に婦中行政サービスセンターやJR速星駅、ファボーレ、富山西総合病院などを回る約11キロの経路を月曜から金曜に1日5便運行する。運賃は無料で予約を受け付ける。運行は11月9日まで。

 車両は高精度の3次元地図を読み込んでおり、あらかじめ設定された操作を自動で行う。全方位を感知するセンサーやカメラ8台を備え、信号機や通行人の飛び出しなどに対応する。工事中の区間などは運転手が手動で操作する。

 市は来年度以降も同地区で数年間、車種や経路などを再検討して実証実験を継続する予定。将来的に運転手を乗せずシステムが全ての操作を行う「レベル4」を目指す。乗客全員にアンケートで安心感や乗り心地などを聞くほか、来年2月上旬にも運行して雪の影響を調べ、民間事業者の技術開発に役立てる。

 20日に同公民館で運行開始の式典が行われ、藤井裕久市長は自動運転が郊外や中山間地などの移動手段の確保につながると期待し「実験を通じて住みよい都市像を追及したい」と述べた。藤井市長らが自動運転を体験した。

  ●「移動が便利に」

 実証実験には国土交通省などが協力。今年度は全国約60自治体で実証実験が行われる。市の担当者は「新たな技術や安全性を知ってもらいたい。交通事業者が導入を考えるきっかけにもなればいい」と語った。

 朝日地区は公共交通が限られ、埜田諭自治振興会長は「移動が便利になる」と歓迎した。19日にも交通事業者や地元住民が試乗し、富山地方鉄道の担当者は「安全面に配慮されていると感じた。突発的な危険への対応なども知りたい」と関心を示した。朝日小の堺颯音君(5年)は「ハンドルが勝手に動いていて不思議だった」と話した。

走行中の車内。ハンドル操作が自動化されている

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