【MLB レッドソックス吉田 シーズン総括】打率は上々も後半戦に打撃失速 守備走塁が足を引っ張り高額契約には厳しい目も

■前半戦で打率.316と首位打者も視野に入っていたが……

レッドソックスと5年9000万ドル(約135億円)という日本人野手史上最高額の契約を結んだ吉田正尚は、1年目でありながら開幕前にWBC日本代表としてプレー。準決勝のメキシコ戦では起死回生の3ランを放つなど、大会新記録の13打点を挙げる素晴らしい活躍で優勝の原動力となった。

レッドソックスでは「4番・左翼」で開幕戦に出場すると、いきなり2安打1打点に加え守備でも補殺を記録する鮮烈デビュー。しかしその後はなかなか安打が出なくなり、最初の13試合を打率.167と苦しむことになった。それでも4月20日に2安打したのを皮切りに、4月23日には日本人選手初の1イニング2ホーマーを放つなど完全にメジャーに適応。16試合連続安打を記録し、5月には週間MVPも受賞した。

前半戦終了時点では打率.316のリーグ3位と首位打者を狙える位置につけていたが、後半戦に大きく失速。前半戦は四球率8.1%、三振率10.7%だったが、後半戦は四球率2.9%、三振率18.4%と悪化した。

コンタクト能力は相変わらず優秀だが、シーズンが進むにつれボール球に手を出す割合が増えた。その結果、打率ではリーグ5位の.289という上々の結果を出したのに対し、出塁率は同20位の.338にとどまった。データサイト『FanGraphs』は開幕前に吉田の成績を、打率.298、出塁率.388と予測していた。実際の打率は予測に近い数字になった一方、渡米前最も評価の高いツールだった出塁率は予測を大幅に下回った形だ。
 

■守備面に課題を残す吉田が生きる道は……

写真:高額契約の妥当性はバットで証明するほかない ©Getty Images

また、守備面も大きな課題となった。もともと守備の評価は高くなかったものの、守備指標でレフトとしてはMLBワースト3位のDRS-4、ワースト2位のOAA-9という数字を出してしまった。守備に関してはリーグワースト級の外野手だったと言ってもいいだろう。

結果として、打撃では平均よりやや上の数字を残したものの、守備走塁が足を引っ張ってしまった形だ。9000万ドルという高額契約を結んでいることもあり、ボストンのファンの目も厳しい。来季開幕時に30歳という年齢を考えると、課題の守備走塁を大きく向上させるのは難しいだろう。

そうなると、やはり打つしかない。レッドソックスが吉田に最も期待したのは打撃力だ。吉田の同僚ラファエル・デバースは守備走塁はワースト級だがその打撃力1本で高い評価を受けているスター選手だ。吉田とデバースは打者としてのタイプが異なるが、同じ左打者としてデバースに近い打撃貢献度が期待されている。

レッドソックスは今季2年連続となる地区最下位に沈んだ。シーズン中には編成本部長であるハイム・ブルームを解任し、後任探しは難航している。もし新たな編成責任者がすぐに決まらなければ、レッドソックスはオフシーズンの補強で一歩出遅れることになるだろう。

レッドソックスは厳しい状況に置かれているが、来季の吉田はそんなチームを救う打撃を披露することができるだろうか。

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